バートルビー症候群

バートルビーと仲間たち

バートルビーと仲間たち

話題となっている『バートルビーと仲間たち』エンリーケ・ビラ=マタス著を読む。
呑気に読書などしている場合じゃないんだけど。
この小説の主人公が罹ったバートルビー症候群とは、
「ものが書けなくなった」作家のことをいうそうで、
ホーソン、メルヴィルランボーからサリンジャー、ピンチョン、
なんとトルストイまで錚々たる同病の先達の症例を取り上げている。
エセーのような風変わりな、でも、魅力的な作品。
書けない、書かない。違いはあるが、なぜ「書く行為」を止めるのか。
回遊魚であるマグロは、ほら、動きを停止すると死んでしまうそうだが、
作家とてそういう業の強い、深い人種、因果な稼業なのではないのか。
『夕鶴』のつうのように、自分の羽を引き抜いて機を織る状態。
オレは、マグロやツルの化身じゃないって。喩えっす、ヘタな。
傑作なんてそうそう生れないのだが、書店に行くと、
傑作、会心作、渾身の一作ばかりが並んでいる。
咄嗟に、庄司薫が浮かんだ。
いまでも、奥方の中村紘子へのお客には、お茶出しをしているのだろうか。
あと、吾妻ひでおなど、バートルビー症候群に罹った漫画家もたぶん、多数いる。
そちらの方がより身近に感じるかもしれない。消えた漫画家ってやつ。


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