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枢密院議長の日記 (講談社現代新書)

枢密院議長の日記 (講談社現代新書)

えー何をしていたかって。しなきゃいけないことは後にして、『枢密院議長の日記』佐野眞一著を読んでいた。
前から気になっていたが、日経ビジネスオンラインの
天皇・皇后からヤクザまで〜『枢密院議長の日記』佐野眞一著(評:小田嶋隆)が、
読ませる引き金となった。
前にも書いたけど、ぼく、日記とか読むの大好きなーんです。
記録も。家計簿、経費帳、戸籍謄本、登記簿謄本なども。
新書にしては部厚く、中身も部厚く、TVドラマ『鹿男あをによし』の最中も、
多部未華子ちゃんを一瞥しながらもページをめくる手は止まらない。


法務省から宮内省の官僚から最後には枢密院議長となった「倉富勇三郎」が遺した膨大な日記を
読み解くという、気の遠くなるような作業を作者以下編集者とチームを立ち上げる。
ともかくギネス級の分量と悪筆。何せ「人間テープレコーダー」と化して、事実を日々認める。
家政婦は見た。ならぬ枢密院議長は見た。
1日に400字詰め原稿用紙50枚相当書いた日もあるとかで尋常じゃない。
愚直なまでに日々起きたことを記していく。
でも、荷風のような文学者ではないから、文章にはさほど魅力はない。
しかし、記録的価値はある。黒子として内側から見える史実のワンシーンワンシーンは、興味深い。
皇室や貴族の存在、元老たちのかけひき、「柳原白蓮騒動」などスキャンダラスな事件の顛末など。
貴族は官軍の末裔だと思うが、その馬鹿殿様と日記の主のやりとりは、
P.G.ウッドハウスのジーヴス・シリーズを地で行っているようで、想像すると笑える。
日記を通していままで日本史の教科書でしか知らなかった人々が、
生身っぽく浮かび上がってくる。
作者がいうように大正時代が抜群に面白い。
難攻不落とされてきた「倉富日記」の解読、入力、抜粋などなど、いやはや、これが労作というものだろう。
これをネタ本に90分特番とかつくりゃいいのに。


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