怪談のパターン

恐怖の愉しみ (上) (創元推理文庫 (535‐1))

恐怖の愉しみ (上) (創元推理文庫 (535‐1))

恐怖の愉しみ (下) (創元推理文庫 (535‐2))

恐怖の愉しみ (下) (創元推理文庫 (535‐2))

 

『恐怖の愉しみ(上)(下)』平井呈一編訳を読んだ。
千差万別、怖いバラエティを堪能する。
堪能しつつ、おぼろげながら怪談のパターンというかフォーマットが
見えてきた。


パターン1.幽霊が出るぞ、出るぞと小出しに脅かして最後に出るパターン


パターン2.思いもかけないところで出る 不意打ちパターン


パターン3.最初から出るパターン


パターン4.出るぞ、出るぞと思わせて結局出ないパターン


パターン5.ひょっとしてあれは幽霊だったのかという時間差出現パターン


パターン6.幽霊屋敷、幽霊乗合馬車、幽霊ホテル、幽霊骨董店、場に憑りつくパターン


パターン7.幽霊のせいではないが感化され気が病んでいくパターン
     a-ひたすら鬱というか内に籠るパターン
          b-誰かれなく暴力や殺戮に出るパターン


パターン8.時制や土地、現世・彼岸を超えるパターン


もっと怖いのは、原稿のワンパターン。
受け取る方がね。

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忘れ物

話の終わり

話の終わり

 

昨日は短パンでも暑かったのに、
同じ恰好では、うすら寒い。
昨日、夕方の仕事、忘れ物をして戻る。
小学校の時、給食着を忘れて戻らされたことを思い出す。
熱いお茶をすすりながら、キーボードを打つ。

『話の終わり』リディア・デイヴィス著を読む。
翻訳をして小説も書いて大学で教えている女性が
かなり年下の男子学生と恋仲になる。
やがて男子学生の心が離れていく。
諦めきれない女性の心には、未練と恨みと後悔が。
と、書いてしまうと凡庸な恋愛小説かと思われるだろう。
でなきゃ増田(はてな匿名ダイアリー)とか。

回想スタイルに本物の「私」と小説の「私」が錯綜する。
現実と虚構。現在と過去。
どことなくミシェル・ビュトール
ヌーヴォーロマンをイメージさせる。
でも、別れた恋人を追う主人公の行動は、
トーカー一歩手前だし。

「彼が去ってしまった今になって、彼に対して前よりも
優しくあたたかな気持ちを持つようになったが、もし本当に
彼が戻ってきたらその気持ちも薄れてしまうのは目に見えていた」

 

 


わかる、わかる。恋愛、あるあるの代表的なやつ。

「翻訳はいついかなる時でもできる仕事で、しかも不幸なとき(原文ママ)のほうがはかどった」

 

仕事に逃げるというかのめり込むことでその間は忘れることができる。
でも、帰宅してお風呂に入ってメイクを落として
鏡に向かうと、彼の姿が浮かんでくる。

突き放したような文章の合間に、突如、
引用したような文章が随所にあるから最後まで読ませるのだろう。


訳者である岸本佐知子のあとがきを読むと、
作者はミシェル・ビュトールやミシェル・レリスの翻訳を
していたと。



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終わりのはじまり

 

ゴールデンウィークが終わりだ。
電車が空いていてよかったが、
明日からまた混むのかと思うと、うんざり。

連休中の宿題は、まずまずの進捗。
あとは、提出後に大幅修正がないことを願うのみ。
移動本は『恐怖の愉しみ(下)』デ・ラ・メア他 平井呈一編訳。
騎士団長殺し 第2部』村上春樹著を読みだす。
欧米の幽霊怪談話をたて続けに読むと、
村上春樹がその轍を敷衍していると思う。
ファッションや文化・風俗は違うが、
構造、骨組みが意外と似ている。
いずれ作中の音楽をYouTubeからリンクしようと思ったら、
すでにアップされていた。
それを聴きながら、読む。
じゃあ作中の料理のレシピはどうだろう。
単なる思いつきだけどさ。

これからはおうちで誕生日祝い。
ごちそうを食べてアルコールを過剰に摂取して寝る予定。

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これは恋ではなくてただの痛み

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)

すべての見えない光 (新潮クレスト・ブックス)


『すべての見えない光』アンソニー・ドーア著を読む。
ドイツの少年兵とフランスの目の不自由な少女が主人公。
ボーイ・ミーツ・ガールものとするならば、
出会うまでが長く、読み手はじらされて、ティーズされて
じりじりする。
まだか、まだか。
やっと出会えたが、戦局は転換して
連合国が優勢となる。
余りにも短い出会いと共有する時間。
少女も少年も
生と死のぎりぎりにある。
好感は抱いたかもしれないが、
恋と呼ぶまでには成熟せず、
あっけなく二人は離れ離れになる。
敗残兵となった少年の行方は。
その後の少女の人生は。

作者は少年と少女の気持ちや行動を
丁寧に書き綴る。
ラストでには、ぐっと来た。
単なるお涙頂戴なら、こうはいかない。
ひねくれた心にもしみるとは。
戦争がなければ会えなかった。
でも、戦争のせいで引き離された。
思うようにいかない最大の理不尽が、戦争。

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束の間


連休前の業務連絡メールが来る。
スケジュールをカレンダーに記入する。
ありがたいことで。
粛々とパソコンに向かう。
連休明けまでに、どれだけ原稿の貯金ができるかで
5月が地獄か天国になる。

『すべての見えない光』アンソニー・ドーア著を読む。
少しづつしか読めないのが、なんともつらい。
これも『この世界の片隅で』と同じ、
静謐な世界で戦時下の悲惨さを感じさせる。

移動本は『恐怖の愉しみ(上)』レ・ファニュ他 平井呈一編訳。
いつもの名訳、名調子で趣の異なる怪談がズラリ。
束の間、怖い話に逃げ込む。

近所の駐車場に以前、アイリッシュポピーが咲いていた。
刈り取られてしまったが、
いつの間にやら復活して
前にもまして群生状態で可憐な花を咲かせている。

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さ行の発音が好き


さて、ゴールデンウィーク
行楽のおともに、つらい宿題のおともに、
土岐麻子 カバー集
いかがっすか。
どの曲も見事に彼女のものになっている。
例えばTUBEの『シーズン・イン・ザ・サン』。
本家の前田が歌うと湘南のビーチの汗くささと
サンオイルのにおいがするのだが、
彼女が歌うと汗くささゼロ。
コート・ダジュールあたりを想像させる。
彼女のさ行の発音が好きで。

 

1.イージュー★ライダー 奥田民生(easy rider / Okuda,Tamio)
2.シーズン・イン・ザ・サン TUBE(the season in the sun / TUBE)
3.カルアミルク 岡村靖幸(Kahlua and Milk / Okamura,Yasuyuki)
4.愛について スガシカオ(about love / Suga,Shikao)
5.くちびるヌード EPO(rips nude / EPO)
6.メイン・テーマ 薬師丸ひろ子(main theme / Yakushimaru,Hiroko)
7.I LOVE YOU 小田和正(I LOVE YOU / Oda,Kazumasa)
8.Hello,my friend 松任谷由美(Hello,my friend / Matsutoya.Yumi)
9.夢で逢えたら 大瀧詠一 (I wish I could meet you in my dreams / Ootaki,Eiichi)
10.君に、胸キュン。 YMO (My Heart Beats for You / Yellow Magic Orchestra
11.い・け・な・い ルージュマジック(rouge magic / Imawano,Kiyoshiro & Sakamoto,Ryuichi)
12.小麦色のマーメイド 松田聖子 (Sunburned mermaid / Matsuda,Seiko)
13.サマーヌード 真心ブラザース (summer nude /Magokoro brothers)
14.青空のかけら 斎藤由貴(pieces of the blue sky / Saitou,Yuki)

 

 


原稿書く前の資料収集と読み込み。
「しりょう」を漢字変換するとまっ先に「死霊」と出てくる。
苦微笑。

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因果関係というバイアス

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法

「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法


仕事関連の本と趣味の本を
ついネット書店で。
リアル書店やリアル古書店で買わないと
いけないんだけど。
あ、マウスは自転車を飛ばしてドンキで買いました、
所要時間往復30分。
アマゾンプライムナウよりも早く。

『「原因と結果」の経済学』中室真紀子 津川友介 共著を読む。
計量経済学について興味深い事例を取りあげつつ、わかりやすく書かれた本。
因果関係と相関関係をとかく人は混同しがちらしい。
そこにはつながりはないのに深読み、誤読して
因果関係を見出す。
つーか、そう思いたくなる。
言ってしまえば因果関係は、バイアスの一種なのかも。

だからこそ「因果推論」を修得しなければならないと。

 

「2つのことがらがそれぞれ原因と結果なのかどうかを評価し、
結論を導くことである」

 


ネコも杓子もビッグデータの時代だと。

 

ビッグデータ時代を生き抜くためには、データ分析だけでなく、
データ分析の結果を解釈するスキルを身に付けておく必要がある」


「因果推論」という魔法のメガネをかけてみると、
世の中は実に

 

「根拠のない通説が山のようにある」

 

計量経済学、いや

 

 

「経済学がこだわる「因果関係」を示唆するエビデンス」、

 

 

ここに重きを置けと。

一例だけ紹介。
受動喫煙防止法が、中小の飲食店の経営保護という名目で
規制が下手すりゃ骨抜きになりそうだが、
この本で「厳しいたばこ規制を実施したアルゼンチン・サンタフェ州」の例が出ている。
結果は「受動喫煙を強いられていた人々の健康状態が改善した」。
ま、当然と言えば当然。
さらに「規制の緩い州」と飲食店の「売上」を比較しても差は出なかった。
ほら、ほら。

因果関係のみで成り立っている推理小説は、虚構だとわかっているからいいんだろう。
ウソデータ、偽データが氾濫しているものねえ。

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