忘れ物

話の終わり

話の終わり

 

昨日は短パンでも暑かったのに、
同じ恰好では、うすら寒い。
昨日、夕方の仕事、忘れ物をして戻る。
小学校の時、給食着を忘れて戻らされたことを思い出す。
熱いお茶をすすりながら、キーボードを打つ。

『話の終わり』リディア・デイヴィス著を読む。
翻訳をして小説も書いて大学で教えている女性が
かなり年下の男子学生と恋仲になる。
やがて男子学生の心が離れていく。
諦めきれない女性の心には、未練と恨みと後悔が。
と、書いてしまうと凡庸な恋愛小説かと思われるだろう。
でなきゃ増田(はてな匿名ダイアリー)とか。

回想スタイルに本物の「私」と小説の「私」が錯綜する。
現実と虚構。現在と過去。
どことなくミシェル・ビュトール
ヌーヴォーロマンをイメージさせる。
でも、別れた恋人を追う主人公の行動は、
トーカー一歩手前だし。

「彼が去ってしまった今になって、彼に対して前よりも
優しくあたたかな気持ちを持つようになったが、もし本当に
彼が戻ってきたらその気持ちも薄れてしまうのは目に見えていた」

 

 


わかる、わかる。恋愛、あるあるの代表的なやつ。

「翻訳はいついかなる時でもできる仕事で、しかも不幸なとき(原文ママ)のほうがはかどった」

 

仕事に逃げるというかのめり込むことでその間は忘れることができる。
でも、帰宅してお風呂に入ってメイクを落として
鏡に向かうと、彼の姿が浮かんでくる。

突き放したような文章の合間に、突如、
引用したような文章が随所にあるから最後まで読ませるのだろう。


訳者である岸本佐知子のあとがきを読むと、
作者はミシェル・ビュトールやミシェル・レリスの翻訳を
していたと。



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