もくもくと

一汁一菜でよいという提案

一汁一菜でよいという提案

 

長いトンネルを抜けて、図書館から貸し出し延長不可の本を
もくもくと読む連休。
で、また長いトンネルに入って原稿を書く。

『一汁一菜でよいという提案』土井善晴著を読む。
珍しくベストセラー本を取り上げる。
たぶんテレビなどで著者の考え方を見聞きした人も多いだろう。
レシピ本じゃない。家庭料理の思想本。
「一汁一菜」というと、質素倹約、二宮金次郎的イメージを持つけど。
著者の唱える一汁一菜は、新しい家庭料理の基本。
ご飯と味噌汁がワンセットであとは、ランダムに副菜をつければいいと。

 

「家庭料理はおいしくなくてもいい」

 

おいいしいと飽きるから。
おいしいのは外食で。
家庭料理もまかない料理と考えればいい。
冷蔵庫を開けて賞味期限間近のウィンナソーセージがあったら、
味噌汁に入れてしまう。
おいいさよりも栄養と時短。
いかに食材を無駄なく使い切るか。
これは共働き風でも独身者でもありがたい教示だ。

お年寄りがトーストに味噌汁を組み合わせている。
それもありだと。
味噌汁にトーストをちゃぷんとしている人も。
ああ、八戸あたりのソウルフードせんべい汁につながるな。

個人的にぬか漬けより手軽な三五八漬けを楽しんでいるが、
剥いた大根やニンジンの皮も漬け込んでいる。
野菜クズも漬物や味噌汁にすれば、
生ごみが減る。

 

「家庭料理は民藝なのです。(とずっと言ってきました)
毎日の食事(たべごと)が美しい 暮らしと人を作ると信じます。
 だからしっかりお料理するといいことがたくさんあります。
食べることより、お料理することが大切です」
土井善晴 on Twitter:

 


このヒントやアイデア
いろいろ紹介されている。

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目にうつる全てのことはメッセージ

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)


『あなたの人生の物語』テッド・チャン著を読む。
映画『メッセージ』の原作となった作品を含めた中短篇集。
いやあ、まいりました。
どれもみなよくて。
グレッグ・イーガンだと、その突拍子もつかないひろがりに
ただただひれ伏すしかないのだが、
この作者の書くものは、
SFだけど、現代小説の最先端、違う、
メインストリームと言ってもいい。
ハヤカワSF文庫じゃなくて、
国書刊行会白水社 エクス・リブリスにあっても
おかしくはないですぜ。

『メッセージ』は、突如出現した異星人とのコンタクトをはかる話。
数学、物理学、言語学、いろんな方面からアプローチをとる。
コミュニケーションをどうとるのか。
そこに子どもとのコンタクトがインサートされる二重構造。
なんて知的なんだろ。
ここに出てくる異星人は、地球人の言語とは
まったく異なった生成をしているようで。
赤ちゃんやNHKスペシャルの『イゾラド』など、いわゆる未開人、外国人。
接近遭遇したとて、100パー理解しあえるなんてありえないし。
異星人のフォルムも独創的。

『顔の美醜について―ドキュメンタリー』は、偽ドキュメンタリー。
インタビュー映像が脳内にオンエアされる。
意外と辛辣で意地悪で、笑える。
女性がみな美人だったら、どうなる。
つまらなくなるだろうな。

映画『メッセージ』の予告編を見たが、ああいうふうにしないと
映画にはならないのか。集客につながらないのか。
でも、見たいけど。


 

 

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リンツを7粒

 

ホワイトデー前日に渋谷のリンツショップへ行ったら、
プチ行列。
リンツゴールドバニーがかわいくて
それが入ったのにする。
どなたかのブログで「ブランド、ゴディバ、味、リンツ」と
書かれていた。
「におい、マツタケ。味、シメジ」みたいなものか。

みんなでシェアして7粒もらった。
1粒食べると、う、うまい。

ホワイトデーは4倍返しと教えてもらった。
恐ろしや。
会社の男性からもらったチョコレートなどで
冬眠前のリスみたいになっている女性も多いんだろうね。

小沢健二関連カバーPVを。

 

 

カバーを聴くと、詞や楽曲の良さがわかる。
本人が歌うと飛行機はJALANAスーパーシートだけど、
若者グループが歌うとLCCって感じ。

 

 

フリッパーズギターのカバー。
聴いてみたら、思った以上に良かった。

 

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『夜行』を読む

夜行

夜行


『夜行』森見登美彦著を読む。
ホワイトデーのプレゼント用に買ったんだけど、
ぺらぺら試し読みしていたら、
止まらなくなって移動中にも読んで結局、最後まで。

『夜行』と銘打たれた銅版画シリーズがモチーフ。
女性と風景が描かれ、全部で48作。
そこから、
尾道奥飛騨津軽天竜峡、鞍馬」のタイトルで
妖怪百物語ならぬ異界五物語がはじまる。
夜の鞍馬ではじまり夜の鞍馬で終わる。


あの世とこの世。
あの世から見れば、逆になる。
異界と日常世界もおんなじ。さかしま。
過去、現在、未来の時制が歪んでいる。
というか、そんなのは関係なくて。

作者のこさえたお化け屋敷に
最初から最後まで翻弄させられる。
悲鳴はあげないが、
あとからじわじわと来る。
心の傷のかさぶたをはがされるような。
痛かゆい。
闇と影。でも、それは光があるから。

映像化するなら、トップカットは
それぞれのモノクロームの銅版画にズームインして
世界に入っていく。

最後に、この一文を引用。

「ある種の家は、ある種の人間と同様、のっけから邪悪な
性悪を示している」
『空家』アルジャーノン・ブラックウッド著より

 

 

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喜々とラ・ラ



『ラ・ラ・ランド』を見に行く。
ダンスと音楽が良かった。あったり前か。
ミュージカルだものね。
主役、エマ・ストーンのチャーミングさもね。
ファニーフェイスというのか。
オープニングの楽曲が往年のピチカートVを想像させたり。

ジャック・ドゥミ監督の『シェルブールの雨傘』や
ロシュフォールの恋人たち』へのオマージュも
あるらしく。
いずれも音楽は、ミシェル・ルグラン。ブラボー!!
映像の人着っぽい色彩感覚が似ているのかな。

菊池成孔が批判と言うのか、
そんな大したこたあないという批評が
ネットで話題になっていた。
ジャズについて語るシーンがあるが、
ああこういうとこかなと思った。

ミュージカル映画ってどことなく見ていて気恥ずかしさを
感じるんだけど、この映画も少しはあった。
青春の入口と出口。
見終わってから、あたたかいものをもらって
楽しい金曜日の午後を過ごすことができた。

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鈍器カルテット

ドラゴン・ヴォランの部屋 (レ・ファニュ傑作選) (創元推理文庫)

ドラゴン・ヴォランの部屋 (レ・ファニュ傑作選) (創元推理文庫)


TVドラマはめったに見ないのだが、
TBSの『カルテット』は、
もっぱらTBSオンデマンドで見ている。
主役4人が、みな、うさん臭くて、
台詞が多くて、その大半が嚙み合わない…。
昔、はまったデヴィッド・リンチの『ツイン・ピークス』や
コーエン兄弟の映画のワンシーンをなぜか思い出したり。
似てないのだが。

映画館で見てもテレビドラマのような映画があるし、
テレビで見ていても映画のようなテレビドラマがある。
『カルテット』は、後者。

『ドラゴン・ヴォランの部屋』J.S.レ・ファニュ著を読む。
平井呈一以来の「半世紀ぶりの」アンソロジーだとか。
『ドラゴン・ヴォランの部屋』がメインなのだが、
これはミステリーとしてなかなかの出来栄え。
今読んでもすっげえ楽しい。

ひょんなことから遺産相続かなにかで小金持ちになったイギリスの若者。
貴族の子弟を真似て、グランドツアーでおのぼりさん感覚でパリ探訪。
美貌の伯爵夫人と恋に落ちる途中の仮面舞踏会のトリックは、
謎解きに疎いぼくもひょっとしてと思ったが、
最後の謎明かしには、なるほどと。
各場面がきちんと書かれていて、
オペラとか舞台とかでもいい感じ。
『ドラゴン・ヴォランの部屋』には、何か出るそうだが。

短編では『ローラ・シルヴァー・ベル』がイチオシ。
これは恋は盲目的話。

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われはサイボーグ

生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来 (現代哲学への招待 Great Works)

生まれながらのサイボーグ: 心・テクノロジー・知能の未来 (現代哲学への招待 Great Works)


週末、昼は録音しておいたラジオ番組を聴きながら、
トライアルの原稿を書く。
夜は芋焼酎のソーダ割りを飲む。

『生まれながらのサイボーグ』アンディ・クラーク著を読む。
スマートフォン、インターネット、VR、ARなどで人はサイボーグ化する。
その功罪を考察しながら、人の進化を探る。
パーフェクトヒューマンならぬポストヒューマンって何?
この本は哲学の範疇らしいが、SFぽかったりして楽しく読めた。
攻殻機動隊』の義体とも、もろカブるし。
最も心に残ったのは、訳者が訊ねた著者からの解答。
引用する。

「携帯可能で偏在的な新しいテクノロジーの波が次々に押し寄せてくるのを目にするにつれて、わたしたち人類とそのテクノロジーが融合し、混ざり合い、共進化する、という本書の中心的メッセージがますます受け入れやすくなるように思われる、ということは述べておきたい。加えて、障害を負った人々の多くが今は堂々と義肢(身体の補強器具)を装着しており、もはやこうした義肢を生物的形態に似せて作る悩みがなくなっていることは見ていてうれしい。心の補強器具の方はあまり進歩していないが、
「スマートドラッグ」の使用は今後ますます受け容れられるようになると
思っている」

 

「心の補強器具」という表現は唯心論者には反感を買いそうだ。
メンタル・ライザップ。

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