『口訳古事記』正しくは『康訳古事記』かも

 

 

『口訳古事記町田康訳を読む。

 

大阪弁というのか河内弁というのか、著者は堺出身だから泉州弁なのか。でも、ひょっとして作者がつくったおもろくてリズミカルな文体により最も古い物語が、なんともいきいきと甦る。まさに神様たちの「仁義なき戦い」。

 

原文は漢字表記なのだが、これをタイプするのはひじょうにめんどいのでカタカナ表記にするが。

〇イザナキノミコトと妹のイザナミノミコトによる国生みの話。

〇生まれついてのあばれはっちゃくスサノオノミコト高天原武装して弟を待ち受ける姉のアマテラスオオミカミ。その暴れっぷりに「天の岩屋」に隠れてしまう。「ヤマタノオロチ」は元々はこういう話だったのか。

〇「因幡の白うさぎ」でおなじみのオオクニヌシノミコト。兄たち(八十神たち)からイジメどころか何回も殺されるが、復活する。
スサノオノミコトの娘、スセリビメと相思相愛となるが、ランボースサノオは、気に食わず、殺そうとする。

大和朝廷の日本統一に貢献したヤマトタケルノミコト。西方のクマソタケル、イヅモタケル征伐、東方のエミシ征伐など数々のデデンデンデン武勇伝。

などなど。あとは、神のいろんな部位から新たな子どもがぽこぽこ生まれるのは、想像するだに楽しい。

 

ちょいとさわりというか、文体のサンプルを2つばかし引用してみる。

 

「そしてこんだ、そのお妃さんを選びやんとあかん。となった。天皇は―略―四柱を妃として迎えた。ところが、ウタコリヒメノミコト、マトノヒメノミコトが死ぬほどブサイクであった。どれくらいブサイクだったかというと、その顔を見た玉垣宮の人たちが、
「ぐわあああっ」
「がっがっがっがっ」
「げろげろげろげろ」
と絶叫し、それを聞いた民衆の心が不安になるほどブサイクだった」
垂仁天皇の治世」より

 

天皇は、こいつ(オウスノミコト のちのヤマトタケルノミコト)を側近くに置いてたら、そのうちどえらいことになるかも知らん、とそう思し召し、呼んだ。―略―
「あの、西の方、クマソタケルちゅやつが二人居る」
「あー、名前は聞いてますわ。強い奴らしですな」
「おー、そや。そやさかい、おまえ、なんやかんや言うて逆ろうてきょんにゃ」
「なめてますね」「おー、なめとんね。さやさかい、汝、行って、玉取ってきたれや」
「わかりました。ほな、行ってきますわ」
天皇はオウスノミコトを鉄砲玉とした遣わしたのである」
日本武尊より

 

町田訳が出なければ、『古事記』を通しで読もうとは思わなかった。古典は文章表現は古いが、物語の骨格、躯体は、さほど現代の小説とは変わっていなかったりする。
そのことを改めて認識させてくれた。


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