光あるところに影がある

貧民の帝都 (文春新書)

貧民の帝都 (文春新書)


『明治開化 安吾捕物帳』で東京の貧民窟を舞台にしてるものがある。
東京にはかつて芝新網町、上野万年町、下谷山伏町、
板橋岩の坂、四谷鮫河橋など貧民窟が多々あったそうだ。
上野万年町は唐十郎下谷万年町物語でおなじみか。
詳しく知りたくなって『貧民の帝都』塩見鮮一郎著を読む。

白土三平原の忍者漫画「サスケ」のアニメーションで
冒頭のナレーション「 光あるところに影がある」
というのがあるが、まさにそういうこと。
ミシェル・フーコーが『狂気の歴史』で精神病院を、『監獄の誕生』で刑務所を
テーマにしたが、病人と犯罪者は収容、隔離されなければならない。

裏歴史をさぐることで
社会や国家、政治の背景、影を知ることができる。
明治新政府のいきあたりばったりぶり。
そりゃいきなり土地勘のない東京に来たわけだから。
オリンピック開催が決まるとその都市が急場しのぎで
スラム街を隠蔽するのと同じ考え方。

失職した武士から女性、子どもまで
路頭に迷う貧民でごったがえした東京。
その惨状、窮状ぶりから
救いの手を差しのべた民間人。
時系列ではないが、賀川豊彦救世軍山室軍平
実業家・渋澤栄一石井十次などなど。
養育園、育児院などの変遷が
ゲニウス・ロキ的に興味深い。
それらの施設は病院などで現存しているものも多いことを知る。
ボランティアはクリスチャンが多く、
キリスト教の布教の一環と訝れるかもしれないが、
何もしてくれない役所などよりは全然ましだろ。

ポイントポイントに掲載されている
写真や地図が脳内タイムワープを後押しする。

この本を読むと何か日本の、東京の近未来と
重なるような気がしてならない。

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