ムーミンが生まれるまで

トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界―ムーミントロールの誕生

トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界―ムーミントロールの誕生

『トーヴェ・ヤンソンとガルムの世界』冨原眞弓著の感想メモ。
『ガルム』とは、画家であるトーヴェ・ヤンソンの母親が
主要メンバーの一人だった「フィンランドのカリカチュア雑誌」。
この雑誌でトーヴェ・ヤンソンは画家としてデビューをし、
ムーミンもひっそりと生まれた。
作者は、『ガルム』のバックナンバーを丹念に読み解く。


カリカチュアとは、新聞のひとコマ風刺漫画と言えば
わかりやすいかもしれない。
『ガルム』では、その対象がフィンランドと争っていたソ連や
ドイツ、日独伊三国同盟など時代や世相を反映している。
いま見て面白いかと言われれば、歴史的価値や
画の巧さは認めるが、ぴんとはこない。
日本の新聞のひとコマ風刺漫画がぴんとこないように。


彫刻家の父と画家の母を持つトーヴェ・ヤンソンは、
美術学校へ進むが、アートへ進むか、
いわゆるイラストレーション、商業美術に進むか選択を迫られ、後者を選ぶ。


『ムーミン物語』は、ぼくは最初にアニメーションで知った。
で、予備校生のときに、ペンギンブックス版を入手して、
その挿絵とアニメーションの違いに驚いた。
ムーミン谷はアニメ版では、ほんわかとした理想郷として描かれていた。
トーヴェ・ヤンソンが描くオリジナルのムーミン谷は
陰りがあり重たかった。厭世的なものさえ感じさせた。
いま思うと北方人で括れてしまえる−強引だけど−
宮澤賢治の作品にも似ている。
絵に占めるベタ(墨)の割合が、水木しげるの漫画にも似ている。
画家から作家へ。トーヴェ・ヤンソンの画家時代の足跡が伺える。


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