探し物をしていたら

ものの言いかた西東 (岩波新書)

ものの言いかた西東 (岩波新書)

 

探し物をしていたら、プリンタインクの入った封筒を発見。
はは。見事に忘れていた。
かように海馬の委縮は進行している。

『ものの言い方西東』小林隆 澤村美幸著を読む。
古くは『探偵!ナイトスクープ』の「アホ・バカ分布図」、
最近では『秘密のケンミンSHOW』で
地域のギャップをおもしろおかしく扱うテーマは定番になっている。
この本は、そのモトネタ的本。
たとえば「「おはよう」と言う地域と言わない地域」。
そんなのは全国共通とか、各家の躾だろと思われるかもしれないが、
「調査結果」によると「東北と九州、沖縄は言わない地域」だそうだ。

谷崎潤一郎は江戸っ子だけど、関東大震災が原因で関西に居を移している。
食を含めた上方の文化と船場言葉などに代表される会話の妙にひかれた。
この本にも船場言葉による挨拶がサンプルで挙げられている。
いやはやその饒舌さ、豊饒さにびっくり。
「最後まで本音を語らず、あくまでも型にはまった挨拶らしさを
押し通しているのである」
以前取材で大阪へ行ってタクシーに乗ったら
運転手から「アメちゃん、どーぞ」と言われた。
リアルアメちゃん体験をした。

北国の人は寒いから口をあまり開けずに、また言葉も節約して使う。
もっともらしい説だが、常々疑問に思っている。
たとえば秋田弁の「けけけ」。
「食べるならこっちで食べろ」という意味だが。
また北国の人は無口という印象が強いが、
湯治や結婚式の披露宴など酒席のにぎやかさは、なかなかのもの。
いまは知らないが。

この本に出ている「調査結果」をみる限りでは、
西日本の方が多彩な「ものの言い方」をしている。
しかし、オノマトペでは「東日本、なかでも東北が盛んだ」と。
なるほど。
短絡的に宮沢賢治草野心平などの詩が思い浮かぶ。
萩原朔太郎は群馬。中原中也は山口か。

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引きこもる

伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ (ハヤカワ文庫SF)

伊藤典夫翻訳SF傑作選 ボロゴーヴはミムジイ (ハヤカワ文庫SF)

 

台風接近なもので
土曜日に買い物をして、日曜日は引きこもる。
♪ テュリャ テュリャ テュリャ
テュリャ テュリャ テュリャリャ
 テュリャ テュリャ テュリャ
 テュリャ リャ ♪
(ロシア民謡『一週間』より)
録音しておいたラジオ番組やradikoタイムフリーや
YouTubeでライブ音源などを聴きながら読む。
天気予報どおり深夜からの風雨は激しく、
目がさえてしまう。

『ボロゴーヴはミムジイ』伊藤典夫翻訳SF傑作選を読む。
編者である高橋良平が「時間・次元テーマを中心に」したチョイスがナイス。
本編もさることながら巻末の「伊藤典夫インタビュー(星雲立志編)」聞き手・鏡明
たまらない。
当時のSF界のアンファンテリブル伊藤典夫の青春時代が面白く語られている。
改めて雑誌『マンハント』の与えた大きさを知る。
伊藤典夫評論集(仮題)』は、出る出るといってまだ出ないようだ。

同時に『ミクロ経済学入門の入門』坂井豊貴著を読む。
『多数決を疑う』の著者の本か。
ここまでわかりやすく書いてあるのは、ありがたい。
まとまりそうだったら後日、レビューに。

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台風クラブ

不思議なシマ氏 (銀河叢書)

不思議なシマ氏 (銀河叢書)

 

台風が来るとワクワクする。
そんな十代の気持ちを映画にした相米慎信の『台風クラブ』。
フワクをとうに越えたぼくはフワクワク。
近所の土嚢姉妹は土嚢を出すでせうか。

『不思議なシマ氏』小沼丹著を読む。
一般的な作者の作品のイメージは
小津映画のようなものなのだが。
『不思議なシマ氏』は言うなればユーモアのあるフィルムノワール
酒場で出会った謎の紳士・シマ氏。
その正体は。
『剽盗と横笛』はピカレスクロマン。
英国モダン風味がいかにも作者らしい。
『カラカサ異聞』は伝奇小説。
『初太郎漂流譚』はノンフィクション。


この版元から出た未刊作品集は
とりわけファンにはありがたいもの。
大島一彦の解説によれば
「面白い話」に燃えていた時代の作品だそうで、
ジャンルは異なるが、
面白さで括れる。
ここまで器用な作家だったとは意外。
娯楽作家で書き飛ばすこともできたと思うが、
結果は知る人ぞ知るユーモア私小説作家になってしまった。
大学教授もしていたので
書きたいものだけ書くというスタイルだったのだろうか。


興味を覚えた方は拙レビューを。

 

『春風コンビお手柄帳』

 

『お下げ髪の詩人』

 

『木菟燈籠』


『更紗の絵』

 

『黒いハンカチ』

 

 

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ほかほかさせるぜ

くわえ煙草とカレーライス

くわえ煙草とカレーライス


何を着ていいかわからない季節。


『くわえ煙草とカレーライス』片岡義男著を読む。
半年に一度くらい作者の作品が読みたくなる。
気持がブルー気味のときが多い。
このところ奇抜なタイトルの作品が多いが、
この本もそう。
奇抜と言うと誤解されるか。なら、キャッチ―だ。

ちょっと前までは私鉄沿線の各駅そばに
個性的な店があった。
茶店、ラーメン店、酒場など。
チェーン店ではなくて
個人事業で切り盛りしていた。

シャッター通りではない商店街。
そこにある店が舞台になっている。
店で出会ったり、思わぬ再会をしたり。
平凡な人間ドラマが展開される。
平凡だから退屈か。
さに非ず。
若者得意の共感できるシマ宇宙か。
タコツボじゃなくて、普遍的な部分で、
それぞれ自分の人生を無理しないで生きている。
幸福、不幸、金持ち、貧乏は別にして。

古い時代の話もあるが、今の時代と思われる話もある。
しかし、インタ―ネットやスマートフォンは出てこない。
高層ビルも出てこない。
万年筆、ボールペン、原稿用紙、ノ-トブック。
男性はどことなくグチグチしているところもあるが、
女性は職業こそ異なるが、いずれもキリっとしていてカッコいい。
それこそ黄金期の日本映画の美しい女優のように。

ポイントごとでカレーライスが出てくる。
食べたくなったが、つくるには時間がかかる。
戸棚を漁ったら賞味期限切れのレトルトの辛口カレーが出てきた。
それで済ます。
ほかほかしてきたのは、
小説か、レトルトカレーか。
答、両方。

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奇想を競う

超動く家にて 宮内悠介短編集 (創元日本SF叢書)

超動く家にて 宮内悠介短編集 (創元日本SF叢書)


『超動く家にて』宮内悠介著を読む。
いろんなテイストの短編集。
センス・オブ・ワンダーを糸井センセイの代表作「不思議大好き」と
意訳するならば、
センス・オブ・ホラーは「不気味大好き」になるのだろうか。
それがびっしり詰まった本。
作者曰く「くだらない話」。
荒唐無稽な発想をいかにして作品に仕上げるか。
作家の力量や熱量が問われる。
以下一部の作品の感想を。

トランジスタ技術の圧縮』
これは、雑誌「トランジスタ技術」を
いかにコンパクトにするかというコンテストの話。
ナンセンスぶりにセンスがある。

『アニマとエーファ』
廃材でつくられた人形の話。
ピノキオ』なんだけど、小説を書く才能がある。
AIが近い将来過去の小説のキャラクターやストーリーを分析して
創作するかもしれない。そんなことを思わせる。
ピノキオ』からの展開がすごくて。

『超動く家にて』
チベット仏教の仏具「マニ車」をヒントにした
宇宙船「メゾンド・マ・ニ」で
起きた連続密室殺人事件。
謎を解くエラリイとルルウ、二人の探偵。
回転するスターシップに住みたいんかーいというツッコミを入れながら読む。
で、オチがそれかーい。

『クローム再襲撃』
村上春樹の『パン屋再襲撃』とウィリアム・ギブスンの『クローム襲撃』を
ミクスチュアしたタイトル。
中身もマッシュアップした感じだが、着地は見事に村上春樹風。

パロディやオマージュが行間に地雷のように埋められている。
ぼくはちょっとしかわからなかった。
あ、これはアニメにいい。あ、これはコントにいい。
あ、これは芝居向け。あ、これは映画向け。
あ、これはすぐにラジオドラマになる。
ついスケベ心を起こすのは元プランナーの哀しいサガ。

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むかし、むかし、


twittterを定期巡回していたら
秋山道男の逝去を知る。
チェッカーズの髪型やコスチュームなどコンセプトを
決めたことで知られている。
マルチクリエイターの元祖みたいな人。
興味のある人はググれ 。

最初に勤めた会社が西友の仕事をしていて
担当ADからすごい人がいると。
それが秋山さんだった。
妻が一時期アシスタントをしていた。
YMOの 写真集『omiyage』にスタッフで名前が出ている。
MIKADOのライブでお姿を見かけた。
って何十年も前の話。

『祝祭の日々 私の映画アトランダム』高崎俊夫著を読む。
映画好きが高じて映画雑誌の編集者となった
作者の私的な映画や文学の批評。
俳優や文化人との原稿のやりとりから
垣間見える人柄。
ネットはおろかFAXもない頃は原稿を取りに行った。

作者と同世代のぼくにとっては
懐かしさもあるが、まったく知らなかったことや
気づかなかったことに目をひらかされる。
林美雄の金曜パック2部、ミドリブタパックの果たした役割。
音楽や映画の情報はラジオと一部のテレビ、雑誌からしか入手できなかった。
情報誌『シティロード』。これは『ぴあ』のライバル誌だったが、
読み物に力を入れていた。小田嶋隆山形浩生を知ったのもここだった。
話の特集』。ぼくは『宝島』派だったが。


荒木一郎の父親と思われる男性の話は、できすぎのように思えるが、納得できる。
個人的なことをいえば、
代々木の予備校が午前中に終わると
池袋で降りて文芸座か文芸地下に行く。
ゴダールを見てわけわからないが、カッコイイとか。
玉石混淆の日活ロマンポルノも見た。

シネフリークのウンチク本では決してない。
でも、映画愛は熱い。
昔はよかったは禁句だが。
どんなものか試し読みしたい人はこちらで。

 

高崎俊夫の映画アット・ランダム



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ツルベ落とし

 

まだゲリラ豪雨はあるのに、
どこからかキンモクセイの香りがする。
ラベンダーの香りがして
気がつくとタイムワープしていた。
それは『時をかける少女』だっつーの。
夕暮れが早くなった。
秋の日は釣瓶落とし
鶴瓶落としじゃないよ。

庵野秀明の映画『ラブ&ポップ』で
女子高生が『あの素晴らしい愛をもう一度』を歌いながら
歩いていた小汚い渋谷川
いまや渋南で話題のスポットになろうとは。
核となる渋谷ストリームは、飲食店ばっかみたいだし。
書店やCDショップは採算が厳しいのか。
ネオビットバレー族御用達になるのだろうね。

マルクス資本論の哲学』熊野純彦著のレビューをまとめようと思ったが、
『祝祭の日々 私の映画アトランダム』高崎俊夫著が楽しすぎて
かっぱえびせん状態。

さて、仕事をせねば。

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