- 作者: エドワードケアリー,Edward Carey,古屋美登里
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/11
- メディア: 文庫
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原稿を書かないと。
企画を考えないと。
庭木を伐らないと。
扇風機を洗わないと。
ガスファンヒーターを出さないと。
礼状を出さないと。
『望楼館追想』エドワード・ケアリー著を読む。
解説を皆川博子が書いている。
これだけで、この本の魅力がわかるというもの。
違うか。
老朽化した五階建ての望楼館と主人公と風変わりな住人たち。
深く読み込んでフロア図でも作成できればいいのだが。
主人公は蝋人形館で不動の蝋人形になる仕事に一時期就いていた。
作者のイマジネーションで構築された望楼館。
そこで繰り広げられる小さな話は、
フェッティッシュ・モード全開だが、
結構、じわじわと沁みてくる。
かなり不器用なじれったいラブストーリーでもある。
望楼館自体が一つの生命体にも思えてくる。
似ていないかもしれないが、
かつての同潤会・代官山アパートメントや
青山アパートメントあたりを重ねてしまう。
夕暮れ時、代官山アパートメントを通り過ぎると、
英国スタイルのブティックのショーウィンドウの灯りが、
滲んでいた。
ぼくが文学少年や文学青年の年頃だったら、
もっと胸がキュンとなっていただろう。