その開いた瞳孔に、ラブクラフトが見せるもの

アウトサイダー―クトゥルー神話傑作選―(新潮文庫)

アウトサイダー クトゥルー神話傑作選』H.P.ラヴクラフト著 南條竹則編訳を読む。

 

見えないから怖いのか。然り。見えるから怖いのか。然り。
異形の者に慄くのもわかるが、普段とは違う姿を見せる、意外な本性を現わす人間にもビビる。幽霊の正体が実は枯尾花だったというのは、ありがちな話だが、なんだ枯れススキかよと笑ってすませて落着したが、ほんとうは幽霊だったりして。

 

ラヴクラフトの暗黒異世界。真っ暗な見世物小屋に入って、最初は何も見えないが、
闇に眼がなれて来ると、いろいろなものが見える。何篇かを取り上げる。


アウトサイダー
古い城に住んでいる「私」。いつからここにいるのか。いつ生まれたのか、今がいつなのかさえも知らない。城の中から外の世界へ彷徨する。歩いても、歩いても、闇が晴れることはない。けたたましい声がする。その声を辿ると怪物らしきものが。いいや、この世界では私の方が怪物なのだ。

 

『ウルタルの猫』
かつてウルタルには猫を捉えて殺す夫婦がいた。村にやって来た異民族のキャラバン。そこの孤児が飼っていた黒い子猫がいなくなる。夫婦の仕業だったことを教える。孤児が祈り、キャラバンは村を去る。すると村中の猫が姿を消す。犯人は彼らかと思いきや、猫たちは戻っていた。そして二人の死骸が。編訳者の解説によると、ラブクラフトは大の猫好きだったとか。猫へのラブとリスペクトをふまえたどことなく童話っぽい作品。

 

『忌まれた家』
その家は叔父である古物研究家であるホイップル博士のものだった。何かが出るとかいう噂はないが、歴代に渡ってその家に関わる者から死者が出た。興味を覚えた私は屋敷を調べる。「家の下には吸血鬼が埋められている」というが。そしてついに彼は怖ろしい体験をする。

 

『銀の鍵』
30歳のときに夢の門の鍵を紛失したランドルフ・カーター。夢の世界を閉ざされた彼は再び小説執筆に取り掛かるが、進まない。50歳のとき、200年ぶりに見つかったという銀の鍵と出会う。この鍵でもう一度夢の世界へ。鍵を手にした彼は自動車で外出。行方不明となる。何処へ。

 

『魔女屋敷で見た夢』
魔都と呼ばれるアーカム。大学で数学や物理学を履修しているウォルター・ギルマン君。数学以上に好きなのがオカルトでよりによって魔女が棲んでいたといわれる家の屋根裏を借りた。学業よりもオカルトに熱が入り、大学で禁書扱いの『ネクロノミコン』などを読み漁る。そこで奇怪なことが次々と起こる。彼は冷たい視線を感じるようになる。気の病なのか、それとも。


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