魚が陸に上がる日-デボン紀

 

 

『手足を持った魚たち―脊椎動物の上陸戦略 シリーズ「生命の歴史」〈3〉』ジェニファクラック著松井孝典真鍋真、池田比佐子訳を読む。

 

書き下ろし「生命の歴史」シリーズ。『カンブリア紀の怪物たち』『失われた化石記録』に続く3冊目が本書である。

 

人のルーツは魚だったといわれる。その証として胎内での人間の最初の生命が魚に酷似しており、次第に人間らしくなっていく、そんな図版を目にした人も多いだろう。

 

さて本書の舞台となるのはデボン紀。今からおよそ4億1000万年から3臆6000万年くらい前。この時代に魚が種類、量ともに爆発的に急増した。ゆえに「魚の時代」といわれる。それは「大気の酸素濃度の上昇によりようやく陸上が生命の棲める環境になったからである」。

 

魚類は脊椎(せきつい)を持った最初の動物。デボン紀後半には四肢(指の付いた4本の足)を発達させ、上陸を開始する。

 

なぜ四肢動物は水から陸へ上がったのか。さまざまな説を紹介している。かいつまんで述べると、「四肢はもともと歩行用ではなかった。泥にもぐりこむために発達した」「生息地域内の個体数が多すぎて窮屈になったため移動した」「捕食魚類から逃げるために」生存のために。陸地に上がれば、敵に襲われる心配もないし、食料もふんだんにある。そしてデボン紀末期には、両性類が出現する。人類が登場するのは、まだまだ先のことである。

 

海に心を惹かれたり、また熱帯魚の飼育がブームになるのも、遺伝子の中にこの頃のことが組み込まれているせいなのだろうか。あるいは人間が人間であることに疲れて、自然と原初の風景を求めているからなのだろうか。

 

骨格などの図版も多数掲載されており、専門的な知識がなくとも、十分に楽しみながら読むことができる。

 

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