スモール・タウン・トーク―脈絡がないと思われる断片断片が、合体して物語になる

 

 

『ゆみに町ガイドブック』西崎憲著を読む。


ゆみに町に住む小説家・翻訳家の「わたし」(女性)。
何やらコンピュータ・プログラミングでゆみに町に関係している「雲マニア」。
クリストファー・ロビンを探す、なぜか「片耳のプーさん」。
彼ら(彼女ら)の話が重層的に展開する。

 

浦安方面にある王国となぜか似た名前の「デステニィーランド」。
それは、「わたし」の脳内にある町。そしてゆみに町の影の町でもある。

 

中心のような周縁 周縁のような中心。
彼岸と此岸。旧市内と新市街。
過去 現在 未来が 混在するような町。
この風景は本物なのか 偽物なのか。
出てくる人物は生きているのか 生きていないのか。
リアルなのか 虚構なのか。
たぶん すべてが 真実。

 

母の3回忌で法要が済んで中学生の頃に住んでいた町のレストランに行った。
通っていなかった道路ができて、大型のショッピングセンターができていた。
住んでいた借家はマンションになっていて景色は一変していた。

驚きはするが失望はしなかった。
だって、脳内には町も借家も変わらない
あの頃の風景を投影してくれるから。


ゆみに町に起きた異変。
形而上と形而下、両面で。
感じる人もいればまったく感じない人もいる。
感じない人は住民が異星人に乗り移られても気づきはしない。
最後に ズームアウトしていくと
ジョルジョ・デ・キリコの絵のような、ゆみに町の光景が。
脈絡がないと思われる断片断片が、合体して物語になる。

 

この本を読んでまったく何も感じなければ
あなたは異星人の寄生体になっているかもしれない。

 

以前書いたレビューを加筆、修正。

 

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