スタジオジブリでアニメーション化するのも、ハマりだろう。ただ、ちょっと不満もある

 

 

『八月の博物館』瀬名秀明著を読む。

 

小学校最後の夏休み、文学少年で友人と小説も執筆している男の子は、帰りにクラシックな洋館を見つける。そこで少女や19世紀のイギリス人のエジプト考古学者と出会う。そして失われし図書館を求めて時空の旅に出るというタイムパラドックスもの。

 

取材も良くしてあるし、資料も丹念に読み込んである。しかし、だからといって良い小説になるとは限らない。お子様向けSFジュブナイルといった感じなのだが。エンターテインメントとして読むには、面白いことは面白い。でも、なんか未消化。スピルバーグの映画みたいなのかな、きっと。映像は確かに凄いけど、映画って感じがしないのと同じ。キャラクターが3DCGでこしらてあるような。ストーリー展開もそれなりに見事なのだが、一から十まで予定調和。

 

『パラサイトイブ』は、衝撃的な作品だった。『ブレインヴァレー』を読んだ時、途中からあれあれっ?ひょっとして…。やっぱり壮大な失敗作だった。と、少なくともぼくはそう決めつけている。書いていくうちに、テーマが拡散しすぎて作者自身も最後には収拾がつかなくなったのではないだろうか。と、SF者(もん)ではないぼくは考える。でも、好きな作品。

 

作者自身、理科畑出身でホラー小説の賞を取ってデビュー。なまじっか売れてしまったばっかりに、多分本格的なSFマニアという了見の狭い人種からやっかまれて、そのことが、本作に本人の分身であると思われる主人公に、そこら辺のうらみつらみを吐かせている。

 

しかし、その部分は水と油。それはそれで別な作品で発表すれば良いのに。筒井康隆の文壇内幕物の小説やエッセイみたいに。あんまり効果的じゃないよね。担当編集者はざっくりと削除を申し出なかったのだろうか。

 

もう少し時空の旅を楽しみたかったのだが、つい余計なとこに目が入ってしまい、こんなことをつらつらと書いてしまった。

 

巻末に「故藤子・F・不二雄先生に捧げる」と書いてあるが、このストーリーで『ドラエもん』の映画版はいけるだろう。あるいはスタジオジブリでアニメーション化するのも、ハマりすぎるくらいハマるだろう。


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