「フランスのディクスン・カー」から、本家へ。『火刑法廷 新訳版』、さすがっす

 

『火刑法廷 新訳版』ジョン・ディクスン・カー著 加賀山卓朗訳を読む。

「フランスのディクスン・カー」ポール・エルテにはまっているが、
ここらで本家も読んでみべえかと、選んだのがこの本。

 

資産家のデスパード家の当主、マイルズ・デスパートが亡くなる。

その直前は心を病んでか、部屋に引きこもっていた。
当日当主の寝室に屋敷に飾ってあるブランヴィリエ侯爵夫人の衣装を身につけた女性がいたことを家政婦が見ていた。
しかし、密室状態の寝室から女性は煙のように消えてしまった。
彼は病死ではなくヒ素で毒殺されたのではないかと甥のマークは訝る。

 

遺体の確認をしようと友人の編集者エドワードらと深夜、霊廟に出向く。
必死の思いで棺を開けたら、マイルズの遺体はなかった。

なんだ、なんだ。冒頭からぐいぐい引き込まれる。

 

本筋以外にもサブキャラクターにもエピソードが豊富で
疑えばみな怪しい。

 

中でも、エドワードの妻・マリー。
偶然の一致なのか「火刑法廷で裁かれた伝説的な毒殺魔マリー・ドブレー」とくりそつ。マイルズが亡くなった晩、彼女は仮面舞踏会に参加するため、外出していた。
しかもブランヴィリエ侯爵夫人に仮装して。
後半でその妻の経歴が明らかにされる。

 

エドワードが担当していた謎のベストセラー作家ゴーダン・クロスが後半からいきなり現れて、なぜか謎を解く。
彼もまた波乱万丈の人生を生き延び、作家として成功した。


クロスとマリーの関係は。真犯人は。そしてクロスのあっけない最後。なぜ。

 

解説の豊崎社長によると書き出しの「ひとりの男が墓地のそばに住んでいた」はM・R・ジェイムズの作品の引用だそうだ。

 

オカルト風味満点の本格ミステリー。ラーメン全部のせのような豪華さ、ボリュームで読後感、満腹。ミステリーの宝石箱やあ(by彦摩呂)

 

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