『ここに来るまで忘れてた。』吉田靖直著を読む。
著者を初めて知ったのはテレビ東京の『共感百景』という年末の特番だった。
ロックバンド、トリプルファイヤーのヴォーカルでありながら、ぼそぼそ話す内容は自虐的だったり、辛辣だったり。
あ、おもろいヤツがあらわれたと思った。
忘れた頃に『タモリ倶楽部』にも出る。
彼が体験した街をテーマに書いたエッセイ集なのだが、第一印象と見事なまでに変わっていない。いくつか取り上げてみると。
作者は四国の歴史ある神社の長男に生まれる。大学に入ったらモテるために、
バンド活動に精を出す。ところが、パチンコ依存症で生活は困窮。
バンドマンの魂である大枚をはたいて買ったギターもたたき売る。
なのに、帰りにパチンコへ行って半分ほどすってしまう。
大学への定期代を浮かそうとおしゃれなバイクtomosをヤフオクで落札。
これでキャンパスへ乗り込んだら、目立つかも。彼女ができるかも。
大宮へ受け取りに行ったが、ヤンキー仕様で爆音がすごい。
これでは大学には行けない。ほったらかしにしておいたら、盗まれた。
でも、めんどくさがり屋だから、保険は払っていると。
「新聞営業の電話」「ティッシュ配り」など楽して儲かるアルバイトを選ぶが、
結果を出せずにクビになる。
意外にもサラリーマンとなる。
プログラミングの知識もないのにSE(システム・エンジニア)となる。
SEでの向上心は持てなくて退社する。
珍しく二股をかけたが、すぐにバレる。二兎追う者は一兎も得ず。
ラジオ番組に出る前、気を落ちつけようとついつい飲酒する。
ところが、コンプライアンスがうるさい昨今、担当者にニオイでわかったのか、
叱責される。飲んだ方が面白いことが言えるのに…つぶやくが。
大昔『シティロード』で町田康のエッセイを読んで以来の衝撃。笑撃。
トリプルファイヤーは、トーキングヘッズと突然段ボールを足して
2で割ったようなサウンド。
変拍子や多めの転調、そこに彼の作詞がからむ。歌う。
これも、また、見事なまでに変わっていない。
楽曲をYouTubeから。ご一聴あれ。