不思議の国からホフマン宇宙へ

 

 いきなりダンゴ、じゃなくていきなり蒸し暑い。

 

『クララ殺し』小林泰三著を読む。

 

車椅子に乗った美少女、クララ。すぐに『アルプスの少女ハイジ』をイメージするが、違う。クララはE.T.A.ホフマンの『砂男』に出て来る主人公の恋人の名前とか。
大坪砂男ペンネーム由来だったよな。とりあえず光文社古典新訳文庫『砂男/クレスペル顧問官』E.T.A.ホフマン著 大島ゆかり訳と併読しながら読み進む。

 

『アリス殺し』では不思議の国のキャラクターとリンクした地球上のアーヴァタール(アヴァター)が描かれていたが、本作では『砂男』、『マドモワゼル・ド・スキュデリ』、『クルミ割り人形と鼠の王様』のキャラクター。不思議の国からホフマン宇宙へ。

 

『アリス殺し』に出ていた蜥蜴のビル=大学院生の井森は夢の世界に続いて地球上で露天くらら、お爺さんとのコンビと出会う。オンジではない、くどいか。お爺さんは「ドロッセルマイアー。大学教授。ホフマン宇宙では上級裁判所の判事」。


クララでもありくららでもある彼女は命を狙われていると。蜥蜴のビル=大学院生の井森は探偵となって颯爽と犯人探しや事件の解明に当たる。クララとくらら、ああややこしや。ホフマン宇宙では彼は蜥蜴なんでなんか軽くあしらわれている。しかし、なぜか彼は殺されても殺されても息を吹き返す。

 

ねじれにねじれた話、どんでん返し。アーヴァタール(アヴァター)のなりすましがいたり。人間かと思ったらオートマータ(自動からくり人形/ロボット)だったり。これは『砂男』の本歌取り。何が何だか。うれしい頭グルグル状態が続いた後でわかるのは、そこに綿密な殺人計画があった。

 

『アリス殺し』ほど多彩なキャラクターは出てこない。つっても奇人変人のオンパレードには変わりはないが。代わりにミステリー度が濃くなっている。

 

作者のファンならおなじみの新藤“怜悧”礼都や徳さんこと岡崎徳三郎も脇を固めている。彼女たちの意外なアーヴァタール(アヴァター)にも注目。こうなったら残りのシリーズも読んじゃおう。


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