前作の『侍女の物語』マーガレット・アトウッド著 斎藤 英治訳の感想、再録。
キリスト教原理主義国家「ギレアデ共和国」に支配された、アメリカ。
少子化を脱却するために、女性は読み書きの教育はもとより、おしゃれ、化粧など
すべてのものを剥奪され、出産マシーン扱いとなる。
セックスは快楽ではなく本来の生殖に重きを置かれる。
監視下のもと個人の自由はない。主人公オブフレッドはかつての日々を追想し、現実逃避する。風刺、寓話にしては重々しく、読んでいるとやるせなさや息苦しさを感じる。
結構エロティックでMっぽい。
『侍女の物語』の続編である『誓願』マーガレット・アトウッド著 鴻巣友季子訳は、どうだったか。
本作は「ギレアデ共和国」の実質上の支配者の一人であるリディア小母、
英才ならぬ英妻教育を受けさせられていたギレアデの司令官の娘アグネス、
カナダ育ちの少女デイジーの3人による手稿や供述の書き起こしから連なる。
ザミャーチンの『われら』を彷彿とさせる形式。
通常の小説の形式よりもリアリティーを感じ、なんだかこっそり覗き読みをしているような感覚。良い意味での抜け感がある。
3人の視点から「ギレアデ共和国」のディストピアぶりが浮き彫りにされる。
3人が繋がって巨悪男性権威主義的国家「ギレアデ共和国」に立ち向かう後半部は、ワクワクさせられる。流行り言葉なら、シスターフッド。
だけど「美少女戦士セーラームーン」の名台詞「月に代わっておしおきよ!」のほうが、
ぼくにはしっくりくる。
男性原理主義国家といっても構わないこの国は、もう一つの「ギレアデ共和国」かもね。世界経済フォーラムの男女平等度ランキングで日本は153カ国中121位などきりがない。
老婆心(老爺心か)ながら言うけど、続き物ではない。『誓願』だけ読んでも問題はない。