「時を戻そう」(byぺこぱ)は、ありえ~る

 

 

『時間は逆戻りするのか 宇宙から量子まで、可能性のすべて』高水裕一著を読む。
著者は「ケンブリッジ大学」に留学、「ホーキング博士に師事」した。

 

長い間、解決できないテーマを最先端の理論と実証データから、ぼくのような理系弱者にもわかるように書かれた本。文章もチャーミング。この手の新書を何冊か読んだが、最も理解できたような気がする。何か所か引用して感想を短く。

 

「時間の矢」

「私たちが「美しい」と感じるものには左右対称のものが多いといわれますが、それも、私たちがこのような自然界の一員だからでしょう。では、自然はどうでしょうか。過去から未来への一方向の流れしかもたない「時間の矢」と呼ばれる性質は、対象性とはまるで正反対です。時間も対称性をもつならば、未来から過去へと進む時間もあるはずです」

 

「時間の矢」は「過去から未来への」一方通行なのかと思ったら、

 

「2019年に量子コンピュータを用いた実験で、ロシア・アメリカ・スイスの共同チームが「時間が逆転する現象」を初めてとらえることに成功しました」

 

えっ!映画『TENET』の世界じゃん。

 

エントロピー増大の法則と生物」

名前は知っているが、具体的にはわからない。

 

エントロピーとは無秩序さ、つまり乱雑ぐあいを表す指標なので、秩序が高い状態はエントロピーが低く、秩序が低い状態は、エントロピーが高いということになります」
「宇宙は、そのはじまりから、徐々に乱雑さを増していくように進化しました。最初のほんのわずかな、宇宙の「種」ともいうべき秩序立った世界が急激に広がり、あちこちでガスが集まり、そこから星ができ、やがて星が集まって銀河ができ、さらに複雑な大規模構造ができていく―138億年かけて進んだこのような宇宙の発展は、無秩序な世界への移行でもあり、エントロピーが増大した結果なのです」

ハードSFを読んでいるような一文。

 

エントロピーは低いほうから高いほうへ増大するだけで、逆に減少することはありえないのです」

 

「時間の矢」と同様に。ところが例外があると。それが

 

「生物です」「生物はエントロピーが支配する宇宙の「時間の矢」に立ち向かい、真逆の方向に独自の「時間の矢」を発射しつづけている、いまのところわかっている唯一の存在なのです」「しかし、生物はエントロピー増大の法則に対抗して独立を勝ちとっているわけでは決してない」

 

相対性理論と時間」

相対性理論によると

「ものすごい速さのロケットに乗っていると―略―地上の人よりも時間がゆっくりと流れるということが起こります」
「だったら長生きができるか」
「選択肢は、二つあります。(1)光速に近い速度で進む宇宙船で暮らす(2)重力の強い惑星に住む」


作者はSF映画インターステラー』を例に取り上げている。
ウラシマ効果」。浦島太郎が「助けた亀に連れられて」訪れた竜宮城は巨大な光速ロケットか「重力の強い惑星」なのか。「時間の逆戻り」の解明からタイムワープやタイムリープとかも現実味を帯びて来るんだろうね。

 

「非科学的な考えに深い真理が」

 

「それにしても、人間原理は不可解です。というより、それをみちびいた量子力学、さらに自然そのものが不可解というべきなのでしょう。しかし一方で私は、一見するといかがわしい非科学的な考えにも思われがちな人間原理は、じつは深い真理をはらんでいるような気もするのです」

「非科学的な考え」。宗教、哲学、迷信などなど。廃れた科学理論も敗者復活するとか。

『知の果てへの旅』マーカス・デュ・ソートイ著 冨永星訳とリンクしている。

参考レビュー

soneakira.hatenablog.com

 

人気blogランキング