肌寒い日。コロナ禍でも眼はかゆくなる。

 

人獣細工 (角川ホラー文庫)

人獣細工 (角川ホラー文庫)

 

 

『人獣細工』小林泰三著を読んだ。発想力と着眼点に驚かされる3篇のホラー小説。

 

『人獣細工』
夕霞は生まれつき、臓器に欠陥があった。医師だった父は彘(ブタ)の臓器などを次々と移植する。なんでもブタの臓器は人間の臓器と似ているらしく近い将来実現するかもしれないそうだ。

年頃となった夕霞は、その秘密を知り悩む。戸籍に母の名前は記載されてなかった。父から真相を明かされが、さらなるショックを受ける。愛する娘を助けるためにタブーや倫理などを犯した父。手術の傷跡もむごたらしく、年頃の女の子にとって心の傷となっている。

私は「人彘(ブタ)」。人間ではなくモンスター?手塚治虫の漫画『ブラックジャック』のピノコもそうだったような。朧気。ナイスなタイトル。

 

『吸血狩り』
夏休み、田舎の祖母・祖父の家に集合したいとこたち。主人公の「僕」は8歳。従姉の優を慕っていた。その優が怪しい男とひそかにつきあっている。男は吸血鬼だった。「僕」は吸血鬼の苦手なもの、ニンニク、十字架などで退散させようとする。
優を守るために、正々堂々とバトルする。一進一退の攻防。最初はなめていた吸血鬼だったが。懐かしのジュブナイルSFテイスト。

 

『本』
小学校の同級生・間山伊達緒から送られてきた自著。古びた汚れたこの本を読んだものだけが災厄に襲われる。呪いの本。
不幸の手紙ならぬ不幸の本。中身の一部は「共生体」について書かれてある。「共生体はマメ科の植物の根に存在する癌のような形の根粒」、さらに「われわれが人間だと思っているものは実は菌類など無数の生命体による共生状態なのかもしれない」。ここまでは理解できる。コンピュータの「ハードウェアとソフトウェアの関係も一種の共生関係」だと。送られてきた本を読むことで脳内に「ソフトウェアがインストールされる」。そうすると人を介在して呪いが伝播、伝染すると。そういう意味ではドーキンスの唱えるミームも共生関係か。


人気blogランキング