おもちゃのチャチャチャ&あの日に帰りたい

 

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

 

 

玩具修理者小林泰三著を読む。

以前から名前は知っていた。読もうと思っていたが、やっと読めた。
作者の逝去を知って読むとは不遜な動機かもしれないが。
はまりました、まいりました。あらすじと感想をつらつらと。

 

玩具修理者
壊れたおもちゃを直してくれる玩具修理者。玩具のみならず、テレビゲームまでいろんなものを無料で直す。
子どもたちはおもちゃを壊せば親に叱られるのでこっそり持ち運んでいた。彼はまず「全部のおもちゃをバラバラにする」。そして一から組み立て直す。

うっかり歩道橋の階段から転落して弟を死なせてしまった「彼女」。「彼女」も大きなけがをしていた。玩具修理者の元へ。
死んだ猫と弟を同時に解体、蘇生させる。足りないものは余った部品で代用して。
弟は復活したが、時おり不具合が生じる。都度、玩具修理者にメンテナンスしてもらう。彼は現代のヴィクトル・ フランケンシュタインか。実は「彼女」も直してもらっていた。いつもかけているサングラスを外すと、その目は…。ラストが見事。ゾクゾクしながら読んだ。
「生物と無生物」もテーマにしている。たとえば心臓交換手術とおもちゃのモーター交換は同じではないかといったような。

 

『酔歩する男』
バーで見知らぬ男から声をかけらた血沼。男は大学時代の友人・小竹田だった。二人は手児奈と三角関係にあった。元カレ・小竹田と今カレ・血沼。手児奈を呼び出して彼女の本心を聞こうとする。彼女は鉄道事故で亡くなる。
強い喪失感の襲われて落ち込む二人。医学部に編入する。手児奈の肉体の一部を保管していてゆくゆくは彼女のクローンをつくろうと。「三十年後」、大学教授になった小竹田をたずねる血沼。血沼はタイムワープしてかつての手児奈に会うと。事故に遭わないようにすると。その実験に大学の研究施設の使用を依頼する。
理系出身の作者ならではの時間理論やタイム・トラベル理論が展開される。小竹田もタイム・トラベルできるようになる。しかし、思った通りの過去へうまくはいけない。当然、不都合も生じる。あの日に帰りたいとは思うが、帰らない方がよかったことを思うとためらう。青春時代の思い出話とハードSFが融合。
ホラーというよりもSFじゃん。しかも質の高い。


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