『ピエタとトランジ<完全版>』藤野香可織著を読む。
生まれついての探偵の才能と自分の身辺での殺人事件を呼び起こす運命を併せ持ったトランジ。いわば殺人を呼ぶ女。その助手的立場で医学生のピエタ。
二人が次々と不可解な事件を解決していくガールズ・バディもの。
そう思って読んでいた。
まっ先にピエタとトランジという名前が気になって検索した。
ピエタ
「敬虔(けいけん)の心、慈悲心の意。キリストの遺体を膝に抱いて嘆き悲しむ聖母マリアを表す絵画・彫刻の主題。嘆きの聖母像」
出典:コトバンク デジタル大辞泉の解説
トランジ
「トランジ(フランス語: Transi)は、中世ヨーロッパの貴族や枢機卿などの墓標に用いられた、朽ちる過程の遺体の像やレリーフである」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
あとで作者も本文中に名前のいわれを解き明かしていた。
アニメーションのノベライゼーションのような感じ。
血があふれ出る残虐なシーンも2Dアニメーションに思える。
そこに作者はシスターフッドやフェミニズムをチラ見させる。
チラ見でなければ隠し味。
ピエタは産婦人科医になって結婚。子どもをつくることを考えるが辞める。ついでに結婚も辞める。女性は出産マシーンではないというしっぺ返しか。
しばらく離れていた二人は再びバディとなって次々と起こる殺人事件の謎を解く。
つーか、トランジ、マッチポンプじゃね。
国内外を転々としながら十代から四十代、六十代まで話は進む。
四十代になったある日、ピエタの両親が殺される。
「身元不明の女性の遺体も」。
両親はピエタに女医として女性として家庭をつくって幸福な人生を
望んでいた。
ここで「女子寮連続殺人事件」から登場していた大学一の優等生・森ちゃんが
登場する。彼女はさまざまな事件に直接関わっていないが、なぜかいた。
彼女からの手紙には、ピエタの生き方を批判することが書いてあった。
最後にプロローグとしての『ピエタとトランジ』が載っている。
転校生のトランジとピエタ。ガール・ミーツ・ガール。
<完全版>の設計図はできていたようだ。
節目節目に出てくる「「死ねよ」「お前が死ねよ」」。
「死ねよ」は、若者、JK(女子高生)の間でなくても、軽い意味で使われている。
この小説では、決して軽い意味ではないけど。
死屍累々な世界を自在に生き抜く二人。カッコイイ。