なんの、なんの、ガチなSF短編集

 

なめらかな世界と、その敵

なめらかな世界と、その敵

 

 

『なめらかな世界と、その敵』伴名 練著を読む。

表紙のJK風のイラストレーションとライトノベル風文体。
ついていけるかなと思って読んだら、なんの、なんの、ガチなSF短編集。
著者はアンソロジーを出すほどのSF通(オタク)。
豊富な知識と鋭敏な時代感覚から練られたテイストの異なる6作品。
印象に残ったものを取り上げる。

 

『なめらかな世界と、その敵』
平行世界(パラレルワールド)がテーマ。キーワードは「乗覚」。これを有している人は「なめらかに」自在に平行世界を行き来できる。
しかし、持っていない人は。「乗覚」を持った少女と持っていない少女。永遠は一瞬。一瞬は永遠。不滅の胸キュン青春SFストーリー。

 

『ゼロ世代の臨界点』
日本のSF黎明期は「1902(明治35)年4月、大阪開明女学校」から始まるとされている。しかし、それは「虚構」であると。正しくは「1902年5月『女學同期』に掲載された読者投稿『翠橋相対死事(すいばしあいたいじにのこと)』」だと。
ただしそれはオリジナルではなく海外文学の翻案だった。そして真打のSF作品『藤原家秘帖』前編が発刊となる。など数々のもっともらしいエピソードが盛りだくさんのフェイク日本SF小説史。


『美亜羽へ贈る拳銃』
「新郎と新婦がWK(ウエディング・ナイフ)という銃(注入装置)を脳内に撃ちこむことで脳内のインプラントが稼働、不滅の愛が得られる」と。美亜羽と実継。敵対関係にありながら、愛してる、愛していない、ややこしい関係。二人は銃(注入装置)を向け合う。伊藤計劃『ハーモニー』へのトリビュート作品。

 

『シンギュラリティ・ソヴィエト』
米ソ冷戦時代、両国のAIが人間の能力を超えるシンギュラリティを実現。すると米ソのAI同士がバトルするという仁義なき戦いを描いた話。

 

『ひかりより速く、ゆるやかに』
高校の修学旅行中に乗っていた「新幹線が謎の減速に巻き込まれて、乗客が名古屋に辿り着く時には2700年以上が過ぎている」。新幹線内の高校生と新幹線外の高校生とでは時間経過が異なる。手の打ちようがないのか。「僕」はなんとかして救い出そうとする。「謎の減速」の理由もさもありなんと思わせる。なりふりかまわず立ち向かうアツい主人公。変化球と思ってバッターボックスで待ち構えていたらど真ん中の直球が来た感じ。

 

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