『ヘディングはおもに頭で』西崎憲著を読む。
松永おんは二浪中。実家を離れておじさんのアパートで一人暮らし。
弁当屋のアルバイトをしながら受験勉強。息抜きはフットサル。
あまりうまくはないようだが、ともかく続ける。
フットサルを誘った友人ジブから読書会にも誘われる。
1回目の課題図書がヘミングウェイの『移動祝祭日』、
次がおんの好きなブローティガン、その次が小沼丹。
読書会で知り合った年上の女性・太田さんに誘われて飲みに行く。
おんは太田さんの思わせぶりに期待するが結果は空振り。
バイト先の弁当屋はおばさん帝国。黒一点のおんは
パワハラまがいのことをされる。
余談だが、パートのおばさんはなんであんなに他人(ひと)に厳しいのだろう。
フットサルスクールでも彼より上手な女性から無視される。
それでもスクールには通う。ゲームにも出られるようになった。
高校時代写真部に所属していたおん。
1学年下の写真部員に広川あかるいがいた。
余談。金井憧れというアナウンサーもいるし、驚きはしない。
彼女が「写真雑誌」にセルフヌードを「投稿」、学校に知られ問題となった。
彼女は卒業後、イギリスの大学に留学する。
宙ぶらりんでもあまり気にしないおん。
母親の具合が良くないことを妹のラインで知らされる。
結局、大学受験を断念する。それもなんとなく。
彼の地元は北千住。「日光街道の宿場街」としての古い顔と
「複数の大学と大型ショッピングセンターがある」新しい顔を併せ持った街。
なんとなく郷土愛もある。街の描写も丁寧。
大学へは行かない。なら、どうする。それよりフットサルの大会だ。
フットサルは上達したようだ。
彼女はいないが、友だちはいる。アオハル(青春)、フットサル、まあリア充。
庄司薫の『薫クン』シリーズやサリンジャーの『ライ麦畑のキャッチャー』にも
通じるものがある。松永おんは、令和の薫クン、令和のホールデン・コールフィールドか。