『日本SFの臨界点[怪奇篇]ちまみれ家族』伴名練編のレビューで『雪女』石黒達昌を取りあげた。
昔書いた『冬至草』石黒達昌のレビューをたまたま見つけたので再録。
「SFマガジン」、「文學界」、「すばる」初出作品と書き下ろし一篇を加えた短篇集。
ハヤカワSFコレクションJシリーズから刊行。
これを見るだけで作者のおかれているポジジョンがわかると思う。
医師と作家の二足のワラジという人は、少なからずいるが、
作者の場合、なかなか創作に時間が割けないようだ。
本業の日々の仕事が生命や生死にかかわっているから、
ネタ的(不遜か)にも得るものが多いかもしれない。
作者はかなり理系(医療系)具合が濃密。
これまでの著作の難解ぶりを想定しつつ、久方ぶりに読んでみたら、
案外そうでもなくて、それぞれにセンス・オブ・ワンダー的読み応えがあった。
2篇ピックアップ。
『冬至草』は、これをベースに長篇に仕立て直してもいいと思える作品。
北海道の厳寒な気候、「ウランを含んだ土壌」に生育して、
人の生き血を栄養素として育つ謎の植物。
第二次世界大戦中、それに魅せられた男たち。
ガイガーカウンターを携えてその花を探索に行く男。ピピッと反応がある。
タルコフスキーの映像様式のような。
てきれば、この作品を長く、長ーく読みたいもんだ。
『希望ホヤ』は、癌の特効薬らしい希望ホヤの話。
朝のNHKの食べ物の番組でホヤの特集をしていた。
ホヤは種族的には貝類ではないので、貝柱がないそうだ。
「動物に近い脊索動物門の一種に分類されて」いて身の部分は筋肉だとか。
ホヤのカタチを眺めていると、確かに癌にも効きそうな気はしてくる。
“海のパイナップル”ホヤは東北の三陸海岸が本場で、いまは養殖されている。
はじめて食卓に出たのが、ぼくが高校の時か。
見た目がダメで、恐る恐る食べたら味も磯クサくてダメだった。
今、ホヤ酢は、好物で酢。
この本、中古品しかないようだから、読みたい人はAmazon Kindleか最寄りの図書館で。
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