『野の医者は笑う 心の治療とは何か?』東畑開人著を読む。
パワースポットや占いなど根強いスピリチュアルブーム。
「占いはごく身近な治療文化である」
「私たちが知っている占いの世界は表面的なもので、その奥には深い闇の世界が広がっている」
と作者は言う。
「野の医者」とは、在野の医者。病院にいる医者は医師免許がいるが、
「野の医者」は、そういう資格は不要。
「臨床心理士」である作者は、「心の治療」に関して専門家ではない「野の医者」の門をたたく。
実際に「野の医者」が盛んな土地・沖縄へ出かけてヒーラー、ユタ(シャーマン)、占い師などさまざまな「野の医者」に自らかかる。
「世界の果てまでイッテQ!」のレポーターの如く、体当たりで。
「野の医者」たちの経歴、治療法や「心の治療」への考え方はさまざま。
いわゆる民間療法はやれあやしい、やれ科学的じゃない、やれ金儲けだと見られがち。
しかし、最新の医学では治癒どころか快方にさえ向かわないならば、
すがりたくなる気持ちはわからないことはない。
「マブイ(魂)セラピーとはスピリチュアルセラピーの一種であり、ゲシュタルトセラピーという臨床心理学でも使われている治療法が取り入れられたものだ」
著者はノー偏見、素直に治療を受け、自身で感じたことを書いている。
効果があったり、なかったり。その本音には賛同できる。
「野の医者たちは必死に科学の言葉を使って自分のことを語るけれども、実は宗教と物凄く近いところにいる。同じように、臨床心理学も宗教とかそういったものの末裔であり、怪しい本性を隠しているのではないか。そもそも、心の治療って本来そういうものなのではないか。そういう疑念を書き連ねているのである」
「信ずることで救われる」「イワシの頭も信心から」とか言うが。
プラセーボ効果(偽薬効果)はありだと思うし。
この箇所に瞠目させられた。
「野の医者の基本信念である「考え方が変われば、世界が変わる」という発想は―一部略―ニューソート(New Thought、つまり新しい考えという意味だ)というキリスト教系の思想運動の基本信念なのだ」
「積極思考、ポジティブ・シンキング、あるいは光明思想、―一部略―自分と世界が繋がっているという魔術的な考え方なのだ」
「この発想が野の医者の治療文化を作ってきた。比較的古い時代には新宗教、―一部略―人間性心理学や自己啓発セミナー。さらにはネットワークビジネスやニューエイジ思想―一部略―。そして、現在ではそれがコーチングやNLP、ポジティブ心理学などという形を取っている」
プラグマティズムもその枝葉にある。
扱っている領域で名称こそ異なるし流行り廃りもあるが、実は根っこで繋がっている。
それは作者が言う「深い闇の世界」、フロイトの「無意識」的なものだと思うのだが。
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