『ポップス大作戦』武田花著を読む。久しぶり。
著者といえば、モノクロ写真(とりわけ猫)と個性的な文章。
なんだけど、この本では初のカラー写真がふんだんに。
陰影を帯びたカラー写真。
被写体は、場末、うらぶれた、さびれた風景。
思い出の品、思い出の場所。
物語を感じさせる切り取られた一瞬。
時間がここだけ止まっているような。
ネズミの隠れ家、何だかわからない骨、メンコ、ビー玉なんかが
埋まっているかも。霊的な影とかも。
さすが、木村伊兵衛賞受賞者。
映えているか、いないか。
ぼくは前者。
父親が武田泰淳、母親が武田百合子。
武田百合子の『富士日記』は、愛読書だった。
安直にDNAの為せるワザとは言いたくないが、
あっけらかんとした魅力的な文章。
武田百合子の文章も目玉がグルグルするような観察眼に優れていたが、
負けてはいない。
日常的でありながら不思議な世界。
奇譚集のようなエッセイ集。
第一、タイトルからして凡人には思いつかないと思うのだが。
案外、担当編集者の仮題がそのまままついたりして。
引用。
「ふと見上げたら、可愛らしい雲が浮かんでいる。
「くもちゃーん、元気で死んでますかあ」大きな声で、七年前に
死んだ猫の名を呼ぶ。気持ちがスーッとした」
小声で。でも、モノクロ写真の方が好きだな。