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才女の運命 男たちの名声の陰で

才女の運命 男たちの名声の陰で

 

 

『才女の運命 男たちの名声の陰で』インゲ・シュテファン著 松永美穂訳を読む。

 

元々才能があったのに、結婚や恋愛でその才能を夫や恋人に搾取されたり、内助の功などの不当な評価に甘んじてきた女性たちの生涯を束ねた本。

 

引用―1

「幼年期の体験が彼女を一人の男性との結びつきのなかに追い込んでいるのだ。その男性は彼女の才能を認め、最初はそれを伸ばそうとしていたのであったが、結局は結婚生活のなかで、その才能が自分自身の仕事の役に立つようにしむけていったのである」(「シャルロッテ・ベーレント=コリントの生涯と作品」より)

 

事例の一部紹介。

 

クララ・シューマンとローベルト・シューマン
作曲家の夫と演奏家の妻。「理想的な夫婦として神話化」されていると。
しかし、合うようで合わない。作曲家と演奏家でさえその関係はややこしいのに。
当然「対等の立場」なのだが、妻の名声が高まると夫は面白くない。
エンドロールの順番でもめる俳優みたいに。

 

ゼルダフィッツジェラルドスコット・フィッツジェラルド
グレート・ギャツビー』の著作など一時期は「ジャズ・エイジ」の寵児となった夫婦。スコットはゼルダの手紙や日記に書く才能を認めていた。
しかし、バートルビー症候群になって書けなくなった彼は、ついに妻が書いたものを盗用、パクる。ただ盗用するだけでなく、ゼルダがダメージを受けるような改竄があったと。壊れてしまった彼女。

 

引用―2

「われわれがこれまで芸術や学問、政治の分野においてみてきた女性抑圧のメカニズムは、神学の分野でも明らかに力をふるっているようだ。女性たちの仕事は脇にとりのけられ、忘れられ、男性たちの業績をより輝かしく見せるために、女性の仕事の持つ意味は変えられてしまったりした」(「シャルロッテ・フォン・キルシュバウムの生涯」より)

事例の一部紹介。

 

イェニー・マルクスカール・マルクス
「4歳年上の彼女」は、幼なじみでいまでいう英才教育を受けていた。
結婚後、4人の子どもを抱えての貧困のなかで夫を支える。
しかし、夫は家の世話をしていた女性との間に子どもを産ませる。


カミーユ・クローデルロダン
カミーユ・クローデルは映画で見た。『Bunkamuraル・シネマ』でロングラン。
女性客が圧倒的に多く、カミーユ・クローデルに自分を投影し、ロダンに夫や彼など男を投影する。共作した彫刻はロダン作。妻とは別れることができない。都合のいい女扱い。映画館でぼくはどんどん縮んでいった。

 

この本を読むにつれて再び縮んでいった。

 

参考記事

gendai.ismedia.jp

 

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