ジャジャジャジャーン~もう一人のシンドラー

 

ベートーヴェン捏造 名プロデューサーは嘘をつく
 

 

『べートーヴェン捏造 ―名プロデューサーは嘘をつく―』かげはら史帆著を読む。
TBSラジオ『アフター6ジャンクション』で知った。

 

シンドラーと聞くと『シンドラーのリスト』のシンドラーを思いうかべる。
こちらのシンドラー、アントン・フェリックス・シンドラーは、
一時期、べートーヴェンの秘書、マネージャー、プロデューサー役をしていた。

 

楽聖べートーヴェン。人生の後半は聴力をなくしたが作曲づくりに邁進した。
ロマン・ローランの『ジャン・クリストフ』を読んで感銘を受けた中学生のぼく。

実際はどうだったのか。


世に言われる天才。才能は豊かだが、常識や人格は欠落しているというのか。
ま、世間の顔色をいちいち気にしていては独創的な創造はできない。

 

この本である程度の実像を知る。
せっかちで気難しく、大声で要件を話す。服装や髪型にも無頓着。
ただし才能のある弟子や身内には甘い。シンドラーには辛い。

ま、多少は知っていたが、くせ者シンドラーは知らなかった。


シンドラーははじめはベートーヴェン愛一筋に尽くしていた。
コンサートのだんどりやいまでいうプロモーション施策なども行っていた。
しかし、ベートーヴェンは彼を毛嫌いしていた。

 

耳が不自由なベートーヴェンは、会話を筆談でしていた。
死語、膨大な「会話帳」が残った。
「会話帳」に記載してあるベートーヴェンシンドラーを称して「盲腸野郎」と。
シンドラーにはすまないが、笑った。

 

「会話帳」は伝記などの執筆の際には、一次資料として貴重なものになるはずだった。

ところが、あろうことか、シンドラーが自身に不利なところなどを、
かなりの部分、書き換えた。改竄したのだ。

さらにヤバい内容の「会話帳」は焼却して、証拠隠滅を図った。

 

ベートーヴェン亡き後、彼の手元には「会話帳」だけが残った。
シンドラーベートーヴェンブランドで悠々と人生を過ごすつもりだった。

となると、べートーヴェンの弟子や親族、友人は目の上のたんこぶとなる。

彼はべートーヴェンの伝記を書いて一儲けしようと考える。
しかし、先に目の上のたんこぶから出版される。

 

ようやく出したが、このべートーヴェンの伝記、関係者から事実に忠実ではないと。
そりゃそうなのだから。

 

イケメンピアニスト、マダムキラーピアニスト・リストの師匠ツェルニー
シンドラーの敵の一人。ツェルニーはべートーヴェンの弟子だった。
ツェルニー、聞いたことがある。子どもがピアノ教室で使っていたテキストの名前だ。

 

やがて「アメリカ人の音楽ジャーナリスト」が、彼のインチキを見破る。
だけど、シンドラー、なぜか憎めない。

 

「会話帳」は真と偽の部分の判読が困難で資料的価値は高くないそうだ。もったいない。

 

映画『アマデウス』で天才・モーツァルトを見た時と同じ思いをべートーヴェンに見た。

 

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