『ミミズのいる地球 大陸移動の生き証人』中村方子著を読む。
この季節になると、道路で日干しになったミミズをよく見かける。
学級花壇や自宅の庭で、植え替えや種蒔きをしようと、土を掘っていたら、
ミミズと遭遇したり、ミミズをエサにして、フナやコイを釣り上げるのに夢中になった人もいるだろう。
「ミミズ博士」というあだ名をつけられても、余りうれしくはないかもしれないが、
作者のミミズとの出会いから、 ミミズの生態を追って世界をまたにかけるなど、
文字通りミミズ、ミミズ、ミミズの本である。
「ミミズは4億年以上の歴史を有して」おり、「地球上には約3000種類」いて、 「日本では少なくとも155種類以上記載されている」そうだ。
「ミミズは毎日土を食べて生きている。-一部略-ミミズの口へ入る前の土と、ミミズが外へ出した土とは、 土の性質がまるで違っている。第一に、土と一緒に呑みこまれた新鮮な草の葉や半腐れのワラなどが、 ミミズの体内の分泌液によって豊かな黒い土になって出てくる。第二に、出てきた土は細かい団粒状であるから、 空気が通りやすく、ふわふわと柔らかなものになる」
確かにいい畑は、土が真っ黒でふかふかしている。 他にもミミズコンポスト―「ミミズによって家庭の生ゴミ処理」ができるなど、ミミズの果たしてきた役割は決して小さくはない。 ダーウィン曰く「もしミミズがこの世にいなくなったら植物は滅亡に瀕するだろうと結論している」。
「日本の農業では、ミミズをとりいれて土壌改良にとりくんで」おり、そこで「使っているミミズは日本固有のミミズではなく北米や ヨーロッパからの導入種を改良したもの」だそうだ。なぜならば、日本のミミズはのんびりしていて生長も遅く、農業には適していないからだとか。
サブタイトルの「大陸移動の生き証人」とは、大陸移動説を提唱したアルフレッド・ウェグナーが
「北米大陸東岸とユーラシア大陸とで、陸生5種と淡水生3種のミミズの分布がきわめてよく似ていることに気づいた ミヒャエルソンの研究を参考にしながら」「かつて大西洋は存在せず、そこには気候と環境が類似した一つの大陸があったと述べている」。
ミミズは、大陸移動説の有力なアリバイやエビデンスとしても存在しているのだ。
とりわけダーウィンゆかりの地・ガラバゴス諸島で、それまで固有種は存在しないと考えられていたのに、 「海岸の塩分のある所に、多数のミミズ」を発見したくだりは興味深い。
「海水に弱いミミズは、大陸から1000キロメートル離れた海洋島ガラパゴスに自力で到達できたのか」
その謎はまだ解明されていない。 海を何万匹ものミミズが泳ぐシーンは、シュールだろうか。かつて山中の川辺で、泳いで川を横断するヘビを見たことがあるが、 くねくねくとすばやく巧みな泳ぎだった。
-みみずももいろ 土の愉しき 朝曇り 柴田白葉女