怪奇文学山脈トレッキング

 

巨星 ピーター・ワッツ傑作選 (創元SF文庫)
 

 チェーホフ山脈をいったん下山して

ホームステイ週間は怪奇文学山脈トレッキングにいそしむつもり。
 
『巨星 ピーター・ワッツ傑作選』ピーター・ワッツ著 嶋田洋一訳を読む。
時には、こてこてのハードSFが読みたくなって。短篇だが、中身はこってり。
短い感想を。
 
『天使』
主役は「AI搭載で意識を持つ軍用ドローン」。実戦をこなすたびに経験値が高くなる。
メカは人のような意識が持てるのか。「軍用ドローン」は、実に冷静、的確に状況判断する。
しかし、予測が異なることも。ヒューマンエラーと同様にケアレスミスをしたりして。
メカフェチにはたまらない作品。
 
『乱雲』
あ、ゲリラ豪雨などの異常気象の話ではない。
なぜか「知性を持った雲」が、人間を襲うというディストピアもの。
自然環境破壊をやめない人間への報復かも。
抵抗をあきらめた人類は地下空間に隠れて生きる。
なのに地上で生きる父と娘。
 
『帰郷』
深海で耐えられるよう「改造された」人間。いわば改造人間の高い能力と違和感。
はたしてそれは進化と単純に言いきれることなのだろうか。

『短篇集ダブル サイドA』パク・ミンギュ著 斎藤真理子訳に載っている
『深』とオーヴァーラップする。

『巨星』
ワームホール構築船<エリフォラ>が地球を出発してからすでに6千万年以上」。
「AIチンプ」が通常の業務を執り行うが、状況によっては「乗組員が冷凍睡眠から解凍される」。映画『エイリアン』などでおなじみのシーン。
起こされた二人のうち、一人はいわば「AIチンプ」の部下、もう一人は反「AIチンプ」。いがみ合う二人にアクシデントが襲う。

この作品以外にも登場する「フォン・ノイマン・マシン」が気になる。
チューリング・マシン」が知られるが、この「フォン・ノイマン・マシン」は
ワームホール構築に用いられる、自己複製能力を持つ機械のこと」だそうだ。
カッケー。