イ・ギホです。僕のサイン入り本がフリマサイトで安売りされているとです

 

誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ (となりの国のものがたり4)

誰にでも親切な教会のお兄さんカン・ミノ (となりの国のものがたり4)

  • 作者:イ・ギホ
  • 発売日: 2020/01/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

『誰にでも親切な教会のお兄さん カン・ミノ』イ・ギホ著 斎藤真理子訳を読む。
数作、短い感想を。ネタバレもあるので要注意。
 
最初の短篇『チェ・ミジンはどこへ』。
あ、BGMはこれね。
 
 
偶然のぞいたフリマサイトで自著が破格値でたたき売りされていることを知った著者。
新作が書けずに苦しんでいる彼は売主に会いに行く。よせばいいのに。
自虐ネタのほろ苦いユーモア。
 
『クォン・スンチャンと善良な人々』
作家兼准教授が仕事場で借りていたマンション。
そこに男が同じマンションの住人に金を返せという声明文を持って座り込みを始めた。
地区の住民たちが気の毒がって募金を開始する。借金額に達して募金を渡そうとするが、男は受け取らない。人の善意を拒否するとはと思うが。
 
こんな感じの短篇集かと思ったら、

『私を嫌悪することになるパク・チャンスへ』、『ずっと前に、キム・スッキは』
殺人事件をテーマにしたミステリー風味。
お口直しというところか。
視点を変えれば、同じ事件も見えるところが異なる。
彼女はなぜ殺したのか、彼はなぜ殺されなければならなかったのか。
不毛の愛。夫に感謝はしているが、愛は感じない。
情夫と性行為はするが、愛は感じない。辛口もいける。
 
『あとがき』
これも作品。ややこしいが、このあたりが作者の真骨頂。
「訳者解説」によると事実に基づいたものとか。
作者自身が起こした交通事故の示談をめぐる話。
こんなスタイル、読んだことがある。
エーリヒ・ケストナーの『飛ぶ教室』だ。
まえがき・あとがきに著者自身が登場する。
 
普通の人々の普通の生活。
それは世間体とか常識とかいう仮面をつけているのかもしれない。
仮面と素顔のうっかりのぞかせたすき間を見つけて
ねちねち文字を連ね続けると小説になるのかも。