失われた声、奪われた言葉

 

 

『声の物語』クリスティーナ・ダルチャー著 市田泉訳を読んだ。
 
近未来のアメリカ。
突如、「女性の手首にワードカウンターがつけられた」
「一日100語以上」話すと「強い電流が流れる」。
女性は自由に生きるあらゆる権利を剥奪される。
 
主人公は「元認知言語学者」の女性。
夫と長男、双子の次男、長女と暮らしている。
女児には教育を受けさせないような男性優位の政策。
特に長男は男尊女卑の思想を刷り込まれ、
母親にぞんざいな態度を取る。
 
ディストピアSF」とカテゴライズされている。
「ワードカウンター」を外すにはどうすればいいのか。
女性たちを解放しようと立ち上がり、
国家権力と闘うストーリーを予想したら、ちと違った。
彼女はキャリアを見込まれ重要なミッションを受けることになる。

トップシークレット。
国家体制と反体制勢力。
サスペンスとアクションとお色気少々。
アメリカのTVドラマのような味わい。
彼女は妊娠している。父親は夫ではない。
 
ディストピアSF」には違いないが、エンタメ系「ディストピアSF」って感じ。
フェミニストSF」とは呼べないと思う。
たとえば、ろくに読み書きのできない女性たちがやがて母親になったら。
そのあたりが弱い気がする。
 
目まぐるしく話は展開して結局ハッピーエンド。
この帰結もありだけど、そうでないのもあるかなと。

映画館や美術館でいっこうにお喋りをやめない女性たちには、
「ワードカウンター」をつけさせたいとも思うけど。
「一日100語」が上限だから、すぐにビリビリと電流が流れだす。
なんだかTVのバラエティ番組の罰ゲームみたいだ。