男もすなる 政治といふものを女もしてみむとするなり

 

女性のいない民主主義 (岩波新書)

女性のいない民主主義 (岩波新書)

 

  

録音しておいたNHKFM『きらクラ』▽ワルツ祭を聴く。
ワルツがいやなもの、醜いものを浄化してくれるようだ。

『女性のいない民主主義』前田健太郎著を読む。
 
先日、テレビのニュースでフィンランドになんと34歳の女性の首相が生まれたことを知る。
 
なぜ、フィンランドで 34歳の女性首相が誕生した必然

www.asahi.com


ところが、日本はどうだろう。民主主義といいながらも、男女同権といいながらも、
政治に出て来るのは圧倒的に男性、おっさんばっか。
どうすれば「男性の政治学」をまずは「男性と女性の政治学」にできるのか。
そのあたりを洞察している。
 
「男は仕事、女は家庭」「わたし作る人、ぼく食べる人」とか
「性別役割分業を定めるジェンダー規範」が、いまだに大きな影を落としている。
 

「日本のような男性稼ぎ主モデルの福祉国家がなぜ持続してきたのか」

 

 
作者はこのように述べている。
 

「男性稼ぎ主モデルの福祉国家が、サラリーマンと専業主婦からなる家族を優遇すると、その恩恵を受ける家族は、制度を変更することに反対するであろう。逆に個人モデルの福祉国家では、育児支援を通じて女性の社会進出が活発化し、育児支援に対する需要が一層強まるだろう」

 

 
 
「女性のいる民主主義」は、当然、後者の方だ。

「制度を変更することに反対」とは、換言すれば既得権益を守ること。
正規雇用者と非正規雇用者との賃金や待遇格差を是正するワークライフバランス
遅ればせながら導入となるようだが、制度変更反対が長いこと障害となっていた。
 
かつて「マドンナ・ブーム」が起きた。
土井たか子社民党委員長は女性議員の大量当選を「山が動いた」と発言した。
名台詞だと思う。確かにそのときは動いたが、その後はどうだろう。
女性議員の進出の速度を鈍くしているのは、有権者の「ジェンダー・バイアス」だと。
男性はもちろん女性有権者女性候補者に対して厳しく見がちではないだろうか。

「議員に占める男女の不均衡是正」を実現するためには、選挙制度を見直そうと。
で、有効な制度がある。それが「ジェンダー・クオータ」だそうだ。
 

「候補者や議席の一定割合を女性と男性に割り当てる仕組み」

 

 
半ば強制的だが、こうでもしないと政治はおっさんのもののままだろう。
 

「今日の世界で議会下院に置いて何らかのジェンダー・クオータを導入している国は、100カ国を超える」

 

 
やはり効果があるから採用されているのだろう。
 

「日本でも、2018年5月に候補者男女均等法、いわゆる「日本版パリテ法」が成立した」

 

不勉強ゆえ知らなかった。ただし地元の区議選では女性候補者が増加して、
当選する人も増えている。本当に山が動くのはこれからだろう。
 
作者が「おわりに」でこう書いている。
 

「なぜ、ピーチ姫は自力でクッパ城から脱出しなかったのだろうか」

 

か弱き姫を助けに行く勇者マリオという図式。
 

ジェンダー・クオータは、女性を政治的に代表するには有効な仕組みだが、おそらく性的少数者を代表するために用いるのには適さないであろう」

 

LGBTクオータか。残念ながら道はまだ遠いかも。