クリスマスは冥王星くらい遠のく

 

 お散歩中の保育園児とすれ違う。バギーに乗っている子どもたち。

「ジングルベ~ル、ジングルベ~ル、鈴が鳴る」
と大声で歌っていた。子どもが大きくなるとクリスマスは冥王星くらい遠のく。

『ヒョンナムオッパへ 韓国フェミニズム小説集』
チョ・ナムジュ 著 チェ・ウニョン 著 キム・イソル 著 チェ・ジョンファ 著 
ソン・ボミ 著 ク・ビョンモ 著 キム・ソンジュン 著 斎藤 真理子 訳
を読む。
 
以下3作の感想を。
 
「ヒョンナムオッパへ」チョ・ナムジュ
 
年上の彼は良かれと思い、年下の彼女にいろいろ教育的指導をする。
「オレ色に染まれ!」これは『マイフェアレディ』のヒギンズ教授や『プリティウーマン』など枚挙に暇がない。最初は彼の敷かれたレールの上に乗ることを良しとしているが、成長するにつれ自分のレールで走りたくなる。彼は最終的切り札、結婚をちらつかせる。でも、心、ここに非ず。思わずザケンナ!!と心で叫ぶ。いいぞいいぞと思ったが、冷静になってみると、男のぼくとしては複雑。程度こそ違うが、そういう行為は好意的にしてきたもんなあ。
 
「あなたの平和」チェ・ウニョン
 
コンサヴァな母親。娘は反面教師としている。
結婚したが、娘離れできない母はいろいろ指図する。
ただし世間体や常識に基づいたガチガチのアドバイス
娘夫婦の幸せを願ってのことだとは思うが、
自分ができなかったことを娘に過剰に期待する感は否めない。ありがちだけど。
家庭や私を顧みない父親への鬱積した不満のはけ口になっているような…。
まあ辛口のホームドラマ
 
「異邦人」ソン・ボミ
 
主人公の女性が刑事というサスペンス風味の作品。
「女には向かない職業」ってこの言い方はフェミ的にアウトなんだろうが、
「女には向く職業」として書かれた作品。
通常だとスーツを着こなしてナイスプロポーションとか設定されるが、
そういうものは一切排除。
どこまでハードボイルドに迫れるか。その設定がミソ。貸本時代の劇画タッチ。

「火星の子」キム・ソンジュ
 
働く女性と妊娠をテーマに舞台を宇宙船に設定したSFチックな短篇。
ライカ犬とクローン人間の女性と火星探査用ロボットが登場人物。
スプートニク2号に乗せられていたライカ犬」というと映画『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』を思い出す。
クローンの女性飛行士は妊娠中。ロボットは皮肉屋で辛辣なことを言う。いいキャラ。
 

「ほんとに人間って残忍だね。妊娠した動物をどうして宇宙に出せるんだろう?」

 

 
ブラック企業の集合体である地球はブラック星なのか。
『エイリアン』の航海士役のシガニー・ウィーバーが重なってしまう。

フェミニズムと言っても表現方法は多彩なんすね。
内容が結果的に程よくバラケていて良かった。
もしあなたが男性なら、この作品を読んでどの程度共感するか、あるいは反感するか。
フェミ度、違うかフェミ理解度がチェックできる本。