いないんだ

 

インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

インスマスの影 :クトゥルー神話傑作選 (新潮文庫)

 

 

目がかゆくて、くしゃみも出る。
何の花粉だろ。
天気が良くて湿度も低いので
夏用の羽毛布団と毛布を干す。
干したての布団は
猫センサーにすばやく反応するようで
ラガーマンのようにトライして
そこから動かなくなった。
あ、いないんだ。

インスマスの影 クトゥルー神話傑作選』
H・P・ラヴクラフト著  南條竹則編訳を読む。
『ダンウィッチの怪』、『クトゥルフの呼び声』や『インスマスの影』など
代表作7篇を選んで新訳。
CDならばリマスタリングって感じ。
 
建物や人物、怪物たちを文章から想像して読む。
うすぼんやりとしたモノクロームの世界に
明度の異なる闇が浮かぶ。
おぼろげながら情景が見えてくる。
100パー見えないのは、ぼくの想像力不足なのかも。
ハズキルーペをかけても文字は鮮明になるが、
脳内までは鮮明にしてくれない。

いままで読んだものもあるが、改めて読むと、
いまの幻想、怪奇、ホラー的な要素がすべてある。
文学のみならず、漫画、映画、ゲーム、アートなど多岐にわたって。
クトゥルー神話の生みの親、ラヴクラフト
クトゥルー神話」に時代がようやく追いついたのだろう。
なんて陳腐な言い回し。
往年のファンやラヴクラフト信奉者には
何言ってやがんだいって眉をしかめるかも。

クトゥルフの呼び声』に「粘土板に象形文字」で綴られた
クトゥルー神話」が出てくる。
子どもの頃、地球にはまだ見つかっていない国や人種や文化がある。
そう思ったことはないだろうか。
でもそれはやがて忘れ去られてしまう。
ラヴクラフトは忘れることなく、同好の志と膨らませ続け、
もう一つの神話を体系化してきた。

作者のこの一文、シビれた。

「結局のところ、実際には目に見える恐ろしいものは
何も見ていないのだということを良く心に留めておいて
いただきたい」
(『闇にささやくもの』より)