『脳の意識 機械の意識』渡辺正峰著を読む。
いきなり、こうくる。
「もし、人間の意識を機械に移植できるとしたら、
あなたはそれを選択するだろうか」
『攻殻機動隊』でおなじみの義体は、
あくまでも体で脳は含まれていない。
月への宇宙旅行が可能になっても
「人間の意識」はいまだ解明されていない。
どこまでわかるようになったのか。
どんな考え方があるのか。
目からウロコ的本。
「われわれの脳も所詮は電気回路にすぎず、
デジタルカメラとの間に決定的な差はないという驚愕の事実だ」
ニューロンが電波で伝達することはうろ覚えしていたが、
ぷよぷよした脳の中に集積回路が組み込まれているように思える。
「私たちは、世界そのものを見ているわけではない。私たちが見ているように感じるのは、眼球からの視覚情報をもとに、脳が都合よく解釈し、勝手に創りだした世界だ」
となるとリアリティとバーチャルリアリティの図式も
こんがらがってくる。
「サーモスタットに意識は宿るか」
エアコンなどに搭載されているサーモスタット。
「熱膨張の度合いの異なる二枚の薄い金属片を重ねあわせ」
「寒いときには片側に曲がってヒーターが入り、暖かくなったときには
反対側に曲がってヒーターが切れる」
「意識が宿ると主張するのは」「デイヴィッド・チャーマーズ」。
チャーマーズはモノにはみな意識が宿っていると。
首肯できるような、できないような。
パソコンが壊れると「死んだ」とも言う。
仕事で疲れると電池切れと言う。
「意識は情報か、アルゴリズムか」
中でも作者が最重要なものとしてあげているのが
「「生成モデル」と呼ばれる神経アルゴリズム」。
これにより「脳が仮想現実を創りだす」。
それは「夢」だけではない。
「覚醒中の脳の仮想現実システムは、感覚入力や身体からの
フィードバックをもとに、環境と同期をとっている。
感覚入力によってアンカリング(錨をおろす)された状態だと言ってよい。その脳の仮想現実システムが、睡眠中はその「錨」を失い、現実世界からかけ離れた夢世界が出現する」
シュールレアリズムの画家が夢にこだわったのも偶然ではないだろう。
興味深いハードSFのようにも読める。
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