懐かしくはない

オブジェクタム

オブジェクタム

 

『オブジェクタム』高山羽根子著を読む。

最初が『オブジェクタム』。
かつて主人公は壁新聞をつくっている祖父の手伝いをしていた。
町を再訪する。
遊園地はつぶれ、廃墟となっている。
ノスタルジーは、もはや脳内の記憶か
写真や映像にしかない。
移動遊園地や丘の宇宙人騒動など過去と
現在が交錯する。
高山羽根子版『失われた時を求めて』。

母の一周忌で中高時代、住んでいた町を訪ねた。
昼食をとった店から遠くないところのアパートに住んでいた。
長い下り坂と公園はままだったが、
あとは一変していた。
ちっとも懐かしくはなかった。
そんなことを考えさせてくれた。

次が『太陽の側の島』
南方諸島に出征した夫と妻の往復書簡スタイル。
中島敦の『南洋通信』あたりにヒントを得たのだろうか。
素朴な疑問。
軍が手紙の検閲を行っていたはず。
時局や戦局にふれたものや
批判などはNGだったはず。
いっそのこと書簡に墨塗りでもしたら
面白くかつ反戦にならないかと、ふと思った。

最後が『L.H.O.O.Q.』。
デュシャンモナリザのポストカードにひげなどを描き加えた作品のタイトル」
だそうだ。
妻に先立たれた夫。
残された犬はなつかない。で、行方不明となる。
犬を探しているときに出会った女性となぜかねんごろに。
果して犬は見つかるのか。

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