あおられる

殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)

殺人者の記憶法 (新しい韓国の文学)


台風12号、昨日の夕方。渋谷の歩道橋。
シャワーのような雨が、強い風にあおられる。
映画のワンシーンのようで
そのサマをしばし眺める。
仕事を早めに切り上げて電車に乗る。
さすがに、ガラ空き。

殺人者の記憶法』キム・ヨンハ著 吉川凪訳を読む。
アルツハイマーになった70歳のサイコキラーが主人公。
ノローグで過去と現在が重なり合う。
何せ認知症なんで最近のどころか
さっきの記憶がおぼろげ。
でも、昔のことは覚えているらしく。

なかなかにハードボイルド。
主人公は物忘れ対策でTODOTHINGを
テープレコーダーに吹き込む。
ツイン・ピークス 』のクーパー捜査官を
彷彿とさせる。

最後の殺人から20年経つ。
主人公には養女がいる。
溺愛している娘に最近、恋人ができた。
気に喰わない。
20年ぶりで殺意が芽生える。
クリント・イーストウッドの映画みたいだ。
違ったけど。

ところが、真相が明らかになると
めまぐるしく話が展開する。
同じ事件でも加害者側と被害者側では
かなり印象が違うが。
その差異をいかに魅了させるかが作者の力量。

アイデンティティーは
自分じゃなくて周囲からの見方で創成される。
ゆえに人はいろんなペルソナ(仮面)を持つ。
心理学ですぐに学ぶことだが。

映画化されているのか。だろうね。
舞台化するのもいいだろう。

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