ひりひり


ネーミング、もう少し粘らないと。
「ほんとに、それでええのんか」と耳元でささやく声。

『寝ても覚めても』柴崎友香著を読む。
この著者の本ははじめて読む。
どうも偏食ならぬ偏読なものだから。
場面展開の速さとシナリオを思わせる文章。
100説明するのは野暮とでも言わんばかりに
途中で遠慮なくフェイドアウトしていく。
こういう省略もあるのかと思う。
情感と情景。
異なるものをオーバーラッピングしながら
話をつくっていく。
作者の眼の良さを感じる。
主人公はどこにでもいるような女性。
20代から30代の間。
理想と現実に直面しながらも
生きるすべは自然と身に付いていく。
ごはんは食べないと死んでしまうが、
恋はしていなくとも生きてはいける。
しかし、それは生ける屍にも値するのものなのか。

行動経済学や心理学の用語で
アンカリング効果という言葉がある。
人は、失恋などでその思いを
心の底にアンカー(錨 いかり)を下ろしてしまうと
なかなか引き上げるのが難しくなるそうだ。
この女性もアンカーがやっと上がるかと思ったら、
再び自ら沈めようとする。
元カレと今カレの間で揺らぐ最終部分。
かなりひりひりする。

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