ブッキッシュ・ゴースト・ストーリー

M・R・ジェイムズ怪談全集〈2〉 (創元推理文庫)

M・R・ジェイムズ怪談全集〈2〉 (創元推理文庫)

 

狭い路地での新築工事。
鵜の目鷹の目の古株住民。
越して20数年経つが、
いまだにうちは新参者のボロ家の住人。
二階から工事の模様をのぞこうとしたら
クチナシの白い花が目につく。
いつ、咲いた。

『M・R・ジェイムズ怪談全集 2』を、ちびちび読んで最後まで。
「書斎のエロティシズム」を謳っていたのは、澁澤龍彦だった。
本や絵画や写真などを紐解いて脳内にエロ帝国を建設する。
それが、本来のエロだった。意訳するこんな感じだったと思う。
M・R・ジェイムズは「書斎のゴースト・ストーリー」。
怪談作家は余技で、本来は学者・研究者、教育者。
ブッキッシュ感が半端ない。

「古い本の中に紙片が挿み込んであるものは、私の経験ではよくあることだ。ただし、その内容が興味深いものであるためしはほとんどない。
にもかかわらず、やはり興味のあるものが挿み込まれている場合もあるので、よく見もせずに破り捨ててしまうことだけはやめたほうがよろしい」
(『二人の医師』より)

 

ナイスまくら。潔癖症の女性がいて、
図書館や古書店の本は生理的にダメらしい。
誰がさわったのかわからないと。
そこが怪談やミステリーの種子になんrのだよ。
ぼくも借りて読んでいた本から何かパラパラと落ちてきた。
虫の卵かと思ったらポテトチップスの残骸だった。
よくあるのが書店のしおり、
変わったところでは、消費者金融のレシートがあった。

 

「はじめて訪問した家の書斎に案内されたときなど、主人からのそれ以上のもてなしは不要というわけだ。彼はバラバラになっているセットものを正しい位置に並べ替え、女中がはたきをかけながら嫌気がさして逆さまに突っ込んだ本を、きちんとなおしてやる。それは本に対するささやかな慈善行為のつもりなのである」
(『隣の境界標』より)

 

 

これもナイスまくら。共感できる冒頭から徐々に怖い度が増していく。
書店で本の上にバッグなどを置く輩が、ひそかに我慢ならない。
そういうあなたに、読んでもらいたい。

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