キカイダー ニンゲンダー

不思議なことに、偶然、リンクする本を読むことがある。
先日の『生きた自然を探求する』小林道憲著と
今日、取り上げる『明日、機械がヒトになる』海猫沢めろん著が、そうだ。
作者が、最先端の科学に関わっている人たちに話を聞く。
おおもとは「人間が機械化して、機械が人間化しているのではないか」という疑問。
限られた文字量でここまで過不足ないルポに仕上げるには、
インタビューする方にも、それなりの知識がインプットされていないと。
感心したり、驚いたりしながら読み進む。
以下、感想をば。

 

〇第一章 SR――虚構を現実にする技術

 

VRでもARでもなくて、これからはSRだと。
SRシステムだと現実と仮想現実の区別がつかなくなるそうだ。
幽体離脱」も、このシステムで体験できるとか。
そうするとエロい妄想なども、ほぼ現実化したら、
セックスは快楽と生殖に分化して
村田沙耶香の小説世界が、リアルになるかも。

 

〇第二章 3Dプリンタ――それは四次元ポケット

 

意外だったのは、いまのところ購買層が60代だということ。
「孫の気を引くため」と「デジタル陶芸」が主な目的。
予期せぬ使い方があるはず。
取材した原雄司は、今後は
3Dプリンタでつくたパーツで人間をサポート」
していきたいと。
攻殻機動隊』の義体みたいなものだろう。


〇第三章 アンドロイド――機械はすべて人型になる

 

石黒浩の主張、
「人に心はなく、人は心を互いに心を持っていると信じている
だけである」
に、作者も同意している。


〇第四章 AI(人工知能)――機械は知性を持つか

 

機械が知性を持ったら、人間は職を奪われ、さらに支配されるのではないか。
このあたりのやりとりが冴えている。

 

〇第五章 ヒューマンビッグデータ――人間を法則化する

 

ヒトだけが持つ自由意志。それに、疑問を投げかける松尾豊。
で、矢野和男が、ビッグデータから法則が見出すことができると。
たちえば、「知性よりも本能に操られる」こととか。
作者があげている「行動経済学」にと、つながる話。
物理統計を専攻していた松尾がヒルティの『幸福論』に
感化され、「幸福の法則」へ。

 

〇第六章 BMI――機械で人を治療する

 

リオのパラリンピックで躍動するアスリートを見ていると、
かっこいいと単純に思う。
当然だけどクルマ椅子マラソンのタイムの方が、
フルマラソンのタイムより優れている。
BMIは、いわゆる「サイボーグ技術」。
ここで取材した西村幸男の研究は、違っていた。
「人工神経接続」。
BMIは、「義手や義足」など、目に見えるが、
「人工神経接続」は、体内。
ロボットなどに頼らない。他動ではなく自動。


〇第七章 幸福学――幸せの定理を探る

 

前野隆司が唱える「幸福学」、「幸せプログラミング」。
ロボットがニンゲンそっくりならば、
ニンゲンはロボットそっくりだと。

 

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