- 作者: 岸政彦
- 出版社/メーカー: 朝日出版社
- 発売日: 2015/05/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『断片的なものの社会学』岸政彦著を読む。
同著者の『街の人生』は、聞き取りメインで
作者は裏方に徹していたが、この本では、まっぱな自分が記されている。
つーか、かなりコクっている。
今の時代は、あらゆる場面で論理が明快、意味があるもの、
価値のあるものでないといけないきらいがある。
作者の専門である社会学もそうなのだが、
実際のところは、「無意味」や「理解不能」な事柄が
圧倒的に多いのではないか。
作者は言う。
「本当に好きなものは、分析できないもの、ただそこにあるもの、
日晒しになって忘れ去られているものである」
無理に語ることはない。なのに、誰かに伝えようとしたがる。
作者にとって、まったく知らない人のオンライン日記、ブログをロムすることは、
聞き取りでいろんな人に会うことと同義のようらしい。
「人生は断片的なものが集まってできている」
ジグソーパズルとかモザイク。
織物にも例えられる。
タテ糸を家族、血族、ヨコ糸を地域、社会など。
「私たちの自己や世界は、物語を語るだけでなく、物語によって
つくられる。そうした物語はとつぜん中断され、引き裂かれることが
ある。また、物語は、ときにそれ自体が破綻し、他の物語と葛藤し、
矛盾をひきおこす」
起承転結のあるストーリーは、人生にはないのかも。
未完の物語。
バタイユ言うところのジンテーゼなき弁証法。
「私たちマジョリティは「国家」をはじめとした、さまざまな防壁によって守られているために、壁について考える必要がない」
「そんな、壁によって守られ、「個人」として生きることが可能になって
いる私たちの心は壁の外の他者に対するいわれのない恐怖によって支配されている」
「壁の外の他者」とは、LGBTやホームレス、在日外国人などの社会的少数者。
「いわれのない恐怖」から「進撃の巨人」のように思うのか。
映画「イージーライダー」の結末や移民迫害などもろもろ腑に落ちる。
「そもそも、私たちは、本来的にとても孤独な存在です」
ああ、この一文が、深くしみる今日この頃。