女房、元気で留守がいい

破垣

破垣

『破垣』飯田章著を読んだ。
きっかけは、猫猫先生の尼レビュー。
初老夫婦の日常を描いた私小説
夫は先にリタイアして自宅で書きものをしている。
妻は病院に勤務しており、働いて、ようやくリタイア。
女房、元気で留守がいいと
自由を満喫していたが、
妻が朝から家にいると、
そうもできなくなって、ぎくしゃくする。
普通は逆のパターンだが。

当初は、義母と同居していた。
高齢となって痴呆症気味となり、
郷里にいる息子の元に引き取られる。

飼い犬もいた。
子どもが大きくなって、家を出ると、
犬や猫を飼う。
ご近所にも同パターンの家があった。
犬を朝晩散歩させることで、
元気になった。
名前は、ペス(仮名)。
ペスちゃんのパパと呼ばれていた。
ペスはおとなしくかわいい小型犬で、
散歩の最中、若い女性が「かわいい!」と寄ってきて、
パパもまんざらじゃなかった。

やがてペスは天寿を全うした。
近所の寺でペット葬をした。
しばらくして、パパも亡くなった。
ママに
「ペスが逝き、俺も逝く。お前も一緒に逝こう」と
言われたそうだが、いまだ元気で買い物に行っている。

本題に戻る。
夫婦は二人三脚で家を守ってきたが、
晩年になると、固く縛った紐をほどいてしまうようだ。

リアルっちゃリアルだけど、苦いユーモアに救われる。
突然、艶っぽい一遍もあるが、これも実話なのだろうか。
テーマが同じでも、例えばアリス・マンローの小説は、辛口。
是枝裕和監督の映画のような、
山田太一の脚本のような読後感。

しかし、15年かけて書いて発表したものが、
ようやく一冊の本にまとまるという。
地味だけどいい話。

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