はじめて読む聖書

はじめて読む聖書 (新潮新書)

はじめて読む聖書 (新潮新書)

『はじめて読む聖書』田川健三ほかを読んだ。

何カ所か響いたものを引用。

レヴィナスにとって、それは同胞たちが殺された当の理由である
ユダヤ共同体が存在することの意味と、ユダヤ教信仰の現時的な
必然性を理論的に基礎づけることでした。
ユダヤ人は生き延びる必然性がある」ということと
ユダヤ人を殺したがる人々がいることには必然性がある」
ということを同時に論証すること。それが、戦後のユダヤ哲学者たちの
民族的・歴史的使命だった、そういうふうに言えるだろうと思います」
(「レヴィナスを通して読む「旧約聖書」」内田樹)


レヴィナスの背負ったものの重さを感じる。

ローマ帝国は戦争で勝利したら、その土地の人びとを
奴隷として別の土地に連れていく。あるいは奴隷から解放してやって
軍隊に採用する。その軍隊も違う土地を支配するために派遣する。
近代ヨーロッパ帝国主義のアフリカ支配と基本的な構造は似ているなんです」
(「神を信じないクリスチャン」田川健三)


本当は「新約聖書学者」田川の学問半生の方が
おもしろいんだけど、なるほどと思ったので。

「聖書はちゃんと読んだことがないんです。-略-その理由は、命令されることに疲れるからだと思う。聖書って基本的に命令の言葉で綴られているじゃないですか」
「聖書を読んで命令の言葉だと感じてしまうのは、こちらに仏教徒というか仏教的なものの素養があるからでしょうね」
(「旧約的なものと新訳的なもの」橋本治)

 

橋本節全開。「仏教的なものの素養」は、ぼくたちにもまだ辛うじて
受け継がれている。

マルクスフロイトアインシュタイン、三人ともユダヤ人ですけれど、ある意味でこの三人が二十世紀をつくったというところがありますよね。-略-この三人のあり方が聖書そのものじゃないかと思った。」
(「旧約的なものと新訳的なもの」橋本治)

このあたりも、さすが。東方の三賢人ならぬユダヤの三賢人。

マルクスが扱うのは、家の話ではなくて、家というものが存在している
土地制度のほうでしょう。-略-それが旧約聖書っぽいと思った。それで
「そこに、おっかないお父さんがいてさ」ってことになると、心の問題に
なって、フロイトが登場する。だからフロイト新約聖書なんだなと思った」
(「旧約的なものと新訳的なもの」橋本治)

階級制度の破壊つーか階級闘争か。
「父なる神、主イエス・キリスト」とか言うしね。
よくわからないんだけど、日蓮宗は、日蓮法華経を翻案したものだよね。
同様に新約聖書旧約聖書を翻案したものなのか。
それとも似て非なるものなのか。

「聖書ってどんな本 山形孝夫」の章で懇切に紹介している。

 

「よくわからないけど、科学というのはキリスト教の呪縛から生まれたものなんじゃないかと思うんです」
で、相対性理論アインシュタインが登場したと。
(「旧約的なものと新訳的なもの」橋本治)

 

地動説を提唱するガリレオ・ガリレイが異端審問にかけられたことを
思い出す。ダーウィンの進化論もそうだ。

「神が世界をつくったという聖書の前提が呪縛のように残っていて、それをすべて人間の理解の範疇におさめなければいけないというのが科学の悲しさなんじゃないかな」
(「旧約的なものと新訳的なもの」橋本治)



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