ブエノスイアレスの冬

爪を立てられた生傷よりも、
別れた心の傷の方が痛い。
ピアソラの音色を耳にするたび、
パブロフの犬のように
きみのことを、きみのしなやかな肢体を思い出す。
すべすべした内股、
やわらかな叢、
薄桃色の乳輪。
別れを告げられた時、
細くて長い首を絞めて、死のうと思った。
でもできなくて、情けなくも号泣した。
嘘泣きのつもりだったが、
結局は、精液よりも大量に放出した。
心の傷は年月とともに、小さくはなったが、
癒えはしない。どころか。

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