コーヒーもう一杯

洋食屋から歩いて5分

洋食屋から歩いて5分

『洋食屋から歩いて5分』片岡義男著を読む。
食にまつわる短篇集。
シズル感あふれる文章は、食欲、飲欲?を
かきたてられて困る。
かつては、こういう文章が新聞や雑誌の広告で読めたが…。
疎開先の瀬戸内の海でトマトをボール代わりにして
海中で遊んで、やがてそれを貪る。
海水の適度な塩分がしみ込んで、格別のうまさだとか。
そりゃそうだろ。

『こうして居酒屋は秋になる』は、居酒屋のルポルタージュ
なぜか、外国人が居酒屋を紹介しているような感じ。
太田和彦じゃなくて、吉田類じゃなくて
マイク・モラスキー

昔から喫茶店で原稿を書いていた作者。
コーヒーの描写も素晴らしく、
たまらずキッチンに行って、ペーパーフィルターでコーヒーをいれ、
飲みながら読み続ける。
神保町の喫茶店やなぜかドトールも出て来る。
コスパの良さを認めているし。
スタバが出てこないのは、片岡ワールドに似つかわしくないからなのだろうか。

二本の書き下ろしが載っているが、
『コーヒーに向けてまっ逆さま』に、ひかれた。
作者と田中小実昌が、新宿で偶然出会って
船橋へストリップを見に行き、再び新宿ゴールデン街などで
朝までハシゴ酒する話。
作者がまだテディ片岡の時代で小説は書いていなかった頃。
テディ片岡ってあやしいペンネームだなあと当時思っていた。
田中小実昌片岡義男アメリカ文学の翻訳経由の文体って
村上春樹につながると思うのだが。
田中小実昌は、生前新宿と飯田橋で見かけたことがある。
トレードマークの帽子をかぶっていた。
飯田橋は、なんだろ、佳作座かギンレイホールへ映画を見に行くところだったのだろうか。
「おい、テディ、おまえ、小説書けよ」という台詞。
小説家が胎動した瞬間かもしれない。
ハードボイルドだなあ。
コーヒーもう一杯。

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