五月雨式に

荷風の永代橋

荷風の永代橋

荷風永代橋草森紳一著を読む。
以下、五月雨式に感想。

こんなに厚いとは知らなくて、
非力なぼくが、
電車で読むのに適していない。

著者が偶然、永代橋のすぐそばに
住まいを構え、―本の雪崩に遭った一室―
散歩がてらよく渡る永代橋
かつてそこを永井荷風も渡ったと、
永代橋から荷風の人生を探る。

橋の語源は、端かなと思ったら、そうだった。
端と端、此岸と彼岸を渡すもの。

著者は荷風は、小説よりも日記がいいと述べてる。
御意。
表現は古めかしい所があるが、
日々雑感は、ほんと、ブログのような味わい。
断腸亭日乗』をひも解きつつ、
荷風の行動や心情を思う。

子ども、特に男子はわが父親を反面教師として育つ。
巨人の星』しかり、『エヴァンゲリオン』しかり。
荷風もそうだった。
官僚で漢詩をものす父親。
その期待を裏切って戯作者気取りの作家になる。

ぼくの周りでも、ライター、グラフィックデザイナーをしている人の
親が結構固い職業の人が多い。
で、子どもは、安定した仕事を志向するとか。
三代目は身上潰すというが、
一流企業でもそこまで持たないところが多い気がする昨今。

ぼくは、『摘録 断腸亭日乗』 (岩波文庫) を持っている。
文庫で新仮名遣いで全巻出してくれないだろうか。
あ、電子書籍か、それこそ。

ああいう父親、大人にはなるまいと思っているが、
ふとしたときの感情や言い回し、態度が、きわめて似ていると
思う瞬間があり、いたたまれなくなる。

空襲に遭った時、荷風は重たい日記を抱えて逃げたそうだ。
今ならサーバーをクラウドしてBCPなんてこともできるが。
別段、ITコンサル会社の回し者ではない。
戦後は、預金通帳と現金の入ったカバンを抱えていたそうだが。

高見順と従弟同士とは知らなんだ。
高見が婚外子だったゆえ、無視したのか、
身内嫌いだったからなのかは、知らないが、
才人を輩出している一族。

偶然、父と子をテーマにしたテキストを発見。
坪内らしいシブい人選。

坪内祐三『父系図』(異色の親子たち) / 廣済堂よみものWeb

 

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