地霊版『黒い報告書』

東京自叙伝

東京自叙伝

移動中、『東京自叙伝』奥泉光著を読む。
誰の自叙伝かというと、驚くなかれ東京の地霊のだ。
地霊っていうと、荒俣宏の『帝都物語』の平将門とかね。
生まれてからの東京の変遷を執拗なまでにテーマとして書いているのが、
古井由吉だが、この本では、江戸末期から明治、大正、昭和、平成と
その時代の人間に転生した地霊の生き方を本人の語りで記している。
純文学畑からエンタメ文学にひけをとらぬ面白さで
さまざまなスタイルの作品を発表している作者ならではのもの。
『HHhH プラハ、1942年』ローラン・ビネ著のような新しい歴史小説というよりも、あえて下世話で地霊版『黒い報告書』(「週刊新潮」長期連載)の味わい。
実在人物と虚構の人物との絡み、転生した人物との意外な関連性。
闇社会、裏社会で暗躍する俗物ぶり、人間臭さがたまらない。
正しくは、地霊くささか。
3.11.で一応、結びとなる。

この本で知ったんだけど、
1958年、岸信介が警察官の権限を大幅に拡大する「警職法改正案」を提出、
要するに安保問題で反対する連中はすぐにしょっぴけるようにが本音のようだ。
国民から狙いを見透かされ、猛反対、断念せざるを得なかった。
健全だったんだ、まだ、民主主義は。
その孫にあたる現首相は集団的自衛権などの法案を強引に成立させようとしている。
その中にも、地霊がなりすましたキャラがいるかもしれない。

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