古井由吉とつげ義春

半自叙伝

半自叙伝

『半自叙伝』古井由吉著を読む。
古井由吉自撰作品月報』と『古井由吉作品巻末創作ノート』からなる随筆集。
ふだんから濫読のぼくにとって、
ちゃんとしたというと語弊があるか、
魅力的な日本語の文章というのが率直な印象。
原稿用紙に万年筆で書かれた文章。
たぶん、何度も推敲を重ねた文章。
キーボードで入力、書きっぱなしのテキストとは違う気がする。
実際はそうかもしれないが。
空襲で被災して疎開、再上京、高校、大学、大学院へと進学、
ドイツ文学にひかれて翻訳、創作、
大学の先生との兼業作家をしていたが、学園紛争を契機に作家となる。
東京人は家の間取りにこだわると言ってたのは、
小林信彦か、森まゆみか。
作者にとって住まいの記憶と身体状況の記憶が
なぜかシンクロしているように思われる。

作家となって自宅が仕事場。
平日昼間、子どもと遊んでいると
同じマンションの主婦から訝しがられた。
というエピソードは、個人的に懐かしい。

私小説的な素材を私小説にせず、独特の濃密で幻想的な世界。
―陳腐な言い回しだけど―
つげ義春の作品にも共通するものがあるよなと思ったら、
つげ義春と同年1937年生まれだった。
『杳子』を、つげ漫画で読みたい。
かなわぬ夢だけど。

勝手にコラージュ。
『杳子』古井由吉著の書き出しと
つげのイラストの引用。『つげ義春全集別巻』筑摩書房刊より

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